第14話 吸血鬼

 ポルフィリン症という病気がある。

 一種の遺伝病で、この病気が発症すると、太陽光線を浴びると体内の血球が破壊されるようになる。

 そのため患者は以下のような症状を呈することになる。

・血球破壊により血液の色が抜け青白い顔色になる。

・太陽の光を浴びるとひどいダメージを受ける。

・体力が弱い。

 そう、これらはどれも吸血鬼の特徴である。そしてさらに以下のような特徴を持つ。

・人間の血液を飲むと症状が改善する。(現代では輸血により症状を改善する)


 この病気は吸血鬼伝説の元になったのではないかと言われている。

 だが本当にそうなのだろうか。

 原因と結果が近接しているとき、それらを分離するのは困難なのだ。

 吸血鬼が魔力を失いただの人間にまで減衰した結果がこの病気なのではないだろうか?

 現代という時代は、かって怪物と名を馳せた多くのものがただの人間として苦しみ多い人生を送っている時代なのかもしれない。


 オカルト現象は往々にして現実の現象に擬態する。(『身の回りの実話怪談:第36話 屋鳴り』参照)

 あるいは現実の現象が何らかの歪みを受けて、オカルト化しているのかも知れない。現実の現象は一番エントロピー的に低いため出現確率が高く、その確率的すそ野がオカルト現象として認識されているとも言える。

 世界を律しているのはコスト意識なのだ。一言で言えば宇宙はとってもケチなのだ。

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