第12話 悪魔の印

 悪魔を召喚する際に重要なのは悪魔のシジル(印章)である。

 シジルはうねうねとくねった線と小さな丸で構成された記号である。


 この記号は何かと長い間考えていたが、あるときはっと気が付いた。

 星座なのである。


 長い夜は中世の時代の人間に取っては脅威であった。その長い夜を支配しているものは何か。星空である。

 そして星空は空に太陽が昇ると見えなくなる。悪魔は日が昇るとともに退散する。きちんと符合するのである。

 金星は明けの明星ルシファーと呼ばれる。夜明けのときに一番最後まで残っている星であり、太陽の近くに残る星である。

 夜空を駆ける彗星はホウキ星、魔女が空を飛んでいる姿を現すものとみられていた。


 このように夜空は無数の悪魔により埋められていたのである。もちろん文献には明示されていない。高価な書籍に忌言葉を書く馬鹿はいない。悪魔を認めていないローマ教会により焚書されてしまう。


 星座にそれらの主人が宿り、星座の力を取り込むことで超常の力が得られるという考え方は、東洋にもある。北斗七星の力を借りる陰陽道や道教がそれだ。

 この星座との関連は悪魔召喚の際の制限にも関連している。悪魔は召喚できる時刻が厳密に決められているのだ。最上位のサタンは二十四時間いつでも召喚できるが、位が下の悪魔は一日二時間だけ決まった時刻にしか呼び出すことができない。

 これはその悪魔が所属する星座の位置と関連しているのではないかと、そう思うのである。


 現代ではこれらの星座の形も変化し、そもそも星座の位置を決定する時刻の基準なども歴史と共に変わってしまっているので、悪魔召喚が成功したとは聞かない。

 きっと何らかの現代に合わせた時刻位置補正が必要なのだろう。

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