第11話 オカルトは金になる
多くの人間がオカルトを捏造する。
オカルトは金になるのである。そのためにはかなり常軌を逸したことを行ってしまう。
壁にマリア像の染みが浮かび上がり、その目から血の涙が流れるという怪異があった。
この血の涙を流すマリアは有名になり、ただのボロアパートに大勢の参拝客が訪れるようになった。家主はウハウハである。一日五百人が訪れて、その一人一人から千円を徴収すれば月に千五百万円の売り上げである。これは止められない。
あるテレビクルーが取材に来て、採取した血の涙を分析すると、それはただの赤絵具を溶かした水であることが分かった。
その二週間後、似たようなテレビクルーが訪れ、同じようなことをした。
今度は人間の血液であることが証明された。
恐らくは家主の血である。インチキが暴かれて客の数が減るのを恐れての行為だろう。
さほどにオカルトは金になる。
五十年ほど前、フィリピンで心霊手術ツアーが流行った。術者がガンなどの患者の患部の上を撫でいていると、そこは血だらけになり、術者の手の中に謎の肉塊が出現するのである。これが問題の腫瘍だと言う触れ込みであった。
最後に患部の血をふき取るとあら不思議、そこには傷跡一つもない。
この心霊手術ツアーは流行となり、日本からも多くの患者が一縷の望みをかけて参加した。
もちろんこれはちょっとした手品だ。その証拠に、追跡調査によるとこれらの患者のほとんどがその直後にガンなどでやはり死んでいる。
さて、この謎の肉塊。血の涙と同様にテレビクルーが分析にかけた。その結果、豚の内臓であることが分かった。これを機に、心霊治療ブームは終結に向かう。
そしてその半年後、再び同じテレビクルーがこの地を訪れた。
今度の肉塊は人間の内臓であったという。
さほどにオカルトは金になる。
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