第10話 やっと日本に帰れそう

 待合所で待っている時、ここまでずっと一緒に行動していた山田さん(仮称)に声をかけられる。

「せっかくなので記念に写真を撮りませんか?」

 私と父は一も二もなく頷いて、六人で写真を撮った。

「帰国したら現像して、お送りしますね」

 当時はデジカメが主流だったため、にこやかにそう言われた。ここにきてようやく「日本に帰れる」という実感が湧いてきた。

 思えば長い二日間だった。

 さて、チェックインカウンターに並んでいたのも外人さんだったので、私が代表してやりとりをしたらしい。正直この辺りのことは覚えていないので、父の日記から全て抜粋する。

 以下父の日記より。


-------------------

 先着二人が座席確保でき、残りの四人は搭乗口で必ず座席確保できるらしい。

 とりあえず安心して出口審査に向かう。

 手荷物検査を受け(今回の旅で手荷物検査は四回目だ)

 搭乗口へと急ぐ。搭乗口近くのカウンターで座席のある航空券を受け取る。

 ようやく帰れる。時間は十七時を回っている。

 時間を潰しながら定刻三十分前の十八時ごろ搭乗開始となる。

 

 席は真ん中でとても窮屈。

 でもそんなこと言ってられないか。

 十一時間かけて成田に向かう。

 定刻十八時半に離陸した。

------------------


 そんなわけで定刻通りにシャルル・ド・ゴールを離陸した飛行機は、その後トラブルに見舞われることもなく、快適な空の旅を楽しみながら日本を目指した。

 機内で食べる久方の日本食がとても美味しく、映画鑑賞などをして過ごしていたような気がする。

 そして十一時間のフライトの後、無事成田空港へと到着した。

 日付は十二月二十五日、クリスマス当日になっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る