第7話 レッツゴー!シャルルドゴール空港!
さて翌朝、十二月二十四日。
皆で朝食会場へ向かい、他のツアー客と共にテーブルを囲う。特殊な状況にいるせいか、それまでの七日間はまともに話したことのない他の旅行客との会話が弾む。
なお父の日記によると、この時テーブルを囲って食事を共にした六人は、きしくも同じ飛行機で成田へ帰るメンバーだったらしい。
朝食を終えてロビーへ行くと、旅行代理店の方が来た。
三十人揃ったところでチェックアウト後、ローマ空港へと行く。
ここで全員分の帰国の航空券が手配されるわけなのだが、これがなかなか時間がかかった。
何せ昨日、イタリア人男性(推定)に言われた通り本日はクリスマスイブ。皆が国に帰って家族と休暇を過ごすので、飛行機のチケットの入手が困難だったのだ。
それでもチェックインカウンターの前で待っていると、旅行代理店の人がこう告げてくる。
「帰国便が確保できました。ただし、この三十人が全員同じ飛行機に乗って帰るのは、座席確保の都合上不可能でした。いくつかのルートに分けて帰国して頂きます」
そうしてルートを旅行代理店の人が説明する。
まずパリ経由で大阪の関西国際空港に行くルート。
それからパリ経由で成田空港に行くルート。
そしてパリ経由で名古屋のセントラル空港に行くルート。
私と父の帰国ルートは、フランスのシャルル・ド・ゴール空港を経由しての成田空港着の便と告げられた。当時、自宅が関東にあったので、大阪や名古屋に飛ばされなくて良かったと思う。
さあ大変だ。
ここからフランスに行かねばならない。
ドイツ⇨イタリア⇨日本のはずが
ドイツ⇨イタリア⇨フランス⇨日本になってしまった。
パリ行きのオプショナルツアーに申し込んでいない三十人、なぜか全員がフランスに向かうことになる。こんなことならオプショナルツアーに参加すればよかった。そうすれば少なくともこの二日間、楽しく遊んでいられたはずだ。
しかし贅沢言ってられない。帰れるだけマシだ。最悪ローマで数日間足止めを食らっていたかもしれないのだから。今ならローマで旅のアディショナルタイムを楽しむ余裕もあるかもしれないが、当時の私にそんな広い心はなかった。とにかく日本に帰りたい。父に関していうならば、仕事もある。
しかもここで一点、不安要素があった。
それはローマではパリまでの手続きと搭乗券しかもらえず、しかも搭乗口で航空券に引き換えるとのこと。
パリでの成田行きも、手続きと搭乗券を受け取り、同じくパリのチェックインカウンターで引き換えとのこと。
まだこの時点では、「100%日本に帰れる!」という気持ちにはなれなかった。
しかしもう、行くしかない。旅行代理店の方々を信じ、行くしかない。
このクリスマスイブというクソ忙しい最中、まさかのトランジット失敗というイレギュラーに対応してくださっている方々に我々の運命を委ねるしかないのだ!
というわけで私と父は、同じ帰国ルートとなったツアー客の皆様とともに一路、フランスはシャルルドゴール空港へと向かうことになる。
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