10 ショッピングモールへ

 前日に決めた服装に着替え、あたしはショッピングモールへ向かった。現地集合だ。エントランスには、快人先輩だけが立っていた。


「早いですね?」

「優衣さんこそ。まだ十分前ですよ?」

「遅れるのがこわくて、いつも早めに来ちゃうんです」

「ふふっ、僕もですよ」


 そう言って笑う快人先輩の服装は、淡いブルーのシャツに白いパンツだ。元々の爽やかさと相まって、より一層眩しく見えた。


「きっと瑠可は遅刻でしょうね」

「そうなんですか? 祥太先輩は……あっ、来た!」

「おはよー!」


 片手をあげ、ぶんぶんと振りながら近付いてくる祥太先輩は、白いTシャツにゆるめのデニムというコーディネート。ちょっとチャラいけどよく似合っている。


「優衣ちゃん、私服も可愛いね!」

「そ、そうですか? 祥太先輩」

「もっとゴテゴテした服装かと勝手に思ってたけど、違うんだね!」


 祥太先輩の想像は、きっとエレノアから連想したものなのだろう。あたしは悪役令嬢は好きだが令嬢の服装ができるほどの顔立ちやスタイルじゃない。


「やっぱり瑠可は遅刻ですね。メッセージが来ました」

「あ、本当だ。あいつ、いつも通りだな」

「毎回遅れるんですか?」

「そうなんですよ。慣れましたけどね」


 集合時間から十分遅れて、瑠可先輩がやってきた。彼は全身黒ずくめだ。耳から覗くピアスが、いつもより目立って見えた。


「悪い悪い。まあ、そんなに遅れなかったろ?」

「でも遅刻は遅刻だからね! 今日は優衣ちゃんも居るのに」

「瑠可、気をつけて下さいね?」

「はぁい」


 悪びれない態度の瑠可先輩は、あたしを上から下までじっくりと眺めて言った。


「うーん、五十点ってとこだな」

「悪かったですね! これでもちゃんと考えたんですよ!?」

「まあまあ、可愛らしくて優衣さんによく似合っているじゃないですか」


 そして、祥太先輩がこんな提案をしてきた。


「せっかくだからさー、優衣ちゃんに似合う服探さない? もっと良いのがあると思うんだ!」

「よし、じゃあ勝負だな。誰が一番、優衣に似合う服見つけられるかどうか!」

「る、瑠可先輩!? 勝手に勝負始めないでもらえます!?」

「いいですね。そうしましょう」

「快人先輩まで!?」


 三人ともノリノリだ。あたし一人では止められそうもない。まあ、どのみち目的もなくブラブラ歩くよりは楽しくていいか、と頭を切り替えたあたしは、三人のファッションバトルのマネキンになることに決めた。

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