第1章4話 第1師団との戦闘訓練
訓練開始から1か月がたった。
訓練の内容も体力作りから実践的な模擬戦が増えていった。今日の訓練内容は第1師団の団員が特別に実践練習の相手になってくれるというもので、この訓練を経て自分がこれからどのように戦っていくかの土台を決めていく。
団員の戦闘スタイルには大まかに3種類ある。体術を駆使して戦う超至近距離タイプ・刀などの武器を使い戦う近距離タイプ・銃を使い狙撃や味方のサポートを行い戦う中・遠距離タイプがある。
「100名の普通科1年の諸君、本日の訓練の全体的な指示を担当する第1師団副団長の
そこには筋骨隆々でオールバックの大男が立っていた。その横には、団員であろう男女が5人立っていた。
「本日、1年の諸君には一通りの戦闘スタイルを実践的に体験してもらう。それぞれのクラスに1人ずつ団員をおくので、その団員が相手になる。経験も豊富で実力もある。遠慮なくかかっていきなさい。」
「それではまず、1・2組が超至近距タイプ、3・4組が近距離タイプ・5組が中、遠距離タイプをやってもらう。お前たち、後は頼んだ。」
新田副団長の合図の後、団員たちは生徒たちを誘導し始めた。翔と悠ら1組は団員についていき、広めのグラウンドにやってきた。
「はいでは、1組を担当する第1
萩原という男性は、身長はさほど高くなく痩せ型な体型をしていた。
「時間は20分とのことだったので1回につき5分で5人ずつ来てください。私からは攻撃致しません。私に一撃与えられるように頑張ってくだい。」
明らかになめているといわれるような条件だった。だが、ここにいる誰もがこの条件は妥当だと判断した。それほど今ここにいる団員と自分たちとの力の差があることを自覚していた。
最初の5人が出て戦闘訓練が始まった。誰も一撃を与えられぬまま、悠の番がやってきた。悠はかなり善戦して当たりそうになったがギリギリのところでいなされてしまった。翔も善戦し、萩原の顔に蹴りがかすったところで時間がたった。
「いやー、掠るとは思ってなかったよ。みんななかなか体術のレベルは高いね。じゃあ、次は近距離タイプの訓練だね。形式はさっきと一緒でいろんな武器が置いてあるから好きなのを使ってね。武器は訓練用だから当たっても大丈夫だよ。」
正直、みんなかなり疲弊していたが萩原はまだ全然元気だった。先程20分間20人分いなし続けた人とは思えなかった。
1人のクラスメイトが萩原に
「あのー第1師団ってどんな訓練をしているのですか?」
その質問に萩原は優しく答えた。
「基本的にはここの訓練と何ら変わりないよ。少しハードになっているだけでね。まぁ大きな違いはたまにうちの師団長が相手になってくれることかな。」
萩原の答えを聞いて他のクラスメイトが続けて、
「師団長ってどんな人なんですか。」
「それについてはごめんね。師団長については口外禁止なんだ。」
「そうだな、1つ言えるのは全師団の中でトップクラスで強いってことだね。そんな人が相手だから自然と力はつくよね。」
移動中にいろんなことを聞きながらその日の訓練は全て終了した。残念ながら誰ひとりとして萩原に一撃を入れることはできなかった。
翔が今日も悠と向日葵と帰ろうとしたとき、悠が
「ごめん、今日は行くところがあるから一緒に帰れない。」
「おうわかった。気を付けて帰れよ。」
「うん、お疲れ。」
翔は向日葵と帰りながら今日あったことを話していた。
「向日葵のところはどうだった?」
「めっちゃ強かった。一撃も入れられなかった。でも、相手女性だったけどあんなに強くなれるって知てよかった。」
そんなことを話していると、近くで警報が鳴った。後ろを振り返ると、黒い霧が発生していた。幸い、翔たちが今いるところは団員・育成学校の生徒以外立ち入り禁止の区域であるため市民の心配はしなくてもよかった。だが、思いのほか近くで発生しており、逃げ切れるか怪しかった。
「向日葵、走るぞ。とにかく距離をとる。市街地だけに行かないようにな。」
「わかった。」
走り出したが魔物がすぐさま霧から出てきてしまった。
「よりによって人型かよ。武器も持ってるし獣型もいる。あの獣何?」
「多分、チーター。このままだと追いつかれる。」
「まじか。」
チーター型は翔たちに向かって一直線に向かってきた。
「曲がるぞ。直線じゃなきゃ逃げ切れる。」
翔たちが角を曲がろうとした瞬間、翔の体が痺れたかのように急に動かなりその場に倒れてしまった。
「翔!まさか麻酔銃?」
向日葵が人型に目を向けると銃口をこちらに向けていた。
「まずい追い付かれる。翔、捕まって。逃げるよ。」
「無理だ。俺を抱えた状態であいつらから逃げるのは。」
「だからってここで死ぬわけにはいかないでしょ。」
チーター型が目前まで来たところで、何かがチーター型の体を打ち抜いた。チーター型を打ち抜いたものをよく見ると、和弓の矢だった。しかも、その矢全てがチーター型の心臓部を寸分の狂いもなく射貫いていた。
その後、すぐに第1師団の新田隊が到着し、見事な連携で人型2体を殲滅した。
「荒太さんこっち終わりました。君は訓練にいた子だね。けがはない?大丈夫?」
「はい、麻酔銃で撃たれて痺れているだけなので。」
現地を調査している団員に向日葵が
「あのこの矢を打ったのはここいる誰かですか?」
団員の1人がすぐに答えた。
「いや、これは師団長だね。相変わらずいい腕してるよ。ですよね荒太さん。」
「あぁそうだろうな。和弓の矢を寸分の狂いもなく心臓部にだけを打ち抜けるのは師団長だけだ。多分もう次の仕事に行ってるだろうな。」
翔と向日葵は一目見たかったと少し惜しい気持ちになっていた。
「それはそうと、ちょっと状況を聞きたいからいくつか質問しても大丈夫?そんなに時間もかからないからさ。」
「はい大丈夫です。向日葵は?」
「私も大丈夫です。」
いくつか質問に答え、もう遅いからと萩原に2人とも家まで送ってもらった。
「それじゃあ、ゆっくり休むんだぞ。明日には自分の戦闘スタイルが発表されるんだから。」
「はい、今日はありがとうございました。」
家に着いた翔は疲れていたのかすぐに眠りについた。
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