第1章3話 窮地 登場!氷室師団長
町中に魔物が襲来し、市民の避難誘導をしていた翔ら。しかし、誘導中にハイエナ型の魔物に囲まれてしまい、一斉に襲い掛かってきた。
翔は生身のまま身を挺して守ろうとハイエナ型に向かって殴りかかろうとした。
「翔やめろ!武器もないお前じゃ勝てないぞ。」
翔が今にも殴りかかろうとしたとき、1人の男がハイエナ型を切り伏せた。
「やめな坊主。市民を守ろうとする心意気は立派だがな、考えなしに飛び込むのは感心しないね。すぐ終わるから下がってな。」
男は一瞬で周りを囲んでいたハイエナ型を瞬く間に切り伏した。
190cmはあろう長身に背中に『弐』という文字の入った羽織を羽織ったスーツ姿。手には魔物の血で赤く染まった氷でできた剣を持っていた。
「悠、あの人もしかして。」
「あぁ、人間界に10人しかいないSRMG師団の第2師団師団長【ニブルヘイム】の『ギフト』を与えられた
『ギフト』、それは師団長にだけに与えられる人智を超えた力。15年前の大侵攻後から人間界に協力している魔物によって贈与される。人によって贈与される『ギフト』は異なり、扱えるようになるまで血のにじむような特訓をしなくてはならない。
氷室師団長の『ギフト』【ニブルヘイム】、触れたものを凍らせたり氷の武器を作り出したりできる能力。冷気を操り、対象者の内側から氷漬けにもできる。
「これが師団長の力すごい。」
その場にいる全員が呆気にとられていると
「お前ら、早く避難誘導終わらせろー。まだ近くに魔物が潜んでいるかもしれないから。」
氷室師団長の言葉に思い出したかのように避難誘導を再開させた。
「あっそうそう、さっき魔物に突っ込んだ坊主。ちょっと来い。」
「はい。」
翔はすぐに氷室師団長のもとへ向かった。
「坊主、名前は?」
「月風翔です。」
「翔か。」
氷室師団長は手を上へ上げた。翔は勝手な行動に殴られると思い、覚悟を決めた。だが、その手は頭に優しく置かれた。
「さっきも言ったが考えなしに飛び込むのは感心しない。だが、市民を守ろうとしたのはよくやった。」
翔は安堵の息を漏らした。同時に師団長の力を見れてワクワクしていた。
遠くから団員であろう人が師団長に近づいて
「師団長、魔物は全て殲滅しました。このあたりに魔物はいません。」
「おう、わかった。先に帰って休んでな。ケガしてるやつがいたら治療受けるように言っとけ。」
「さてと、俺も一応このあたり調べてから帰るわ。それじゃあ坊主ども、驕らず鍛えろよ。」
翔らは市民の人たちにけががないかの確認と魔物が消えたことを伝え、自分たちの家へと帰った。帰りの道中、翔と悠は向日葵と合流し今日のことについて語っていた。
「まじで、氷室師団長にあったの?すごっ。」
「だろ、マジで強かった。一瞬で魔物を切り伏せるんだよ。なぁ悠。」
「あぁ、流石だよな。」
話している途中に向日葵が悠にある疑問をぶつけた。
「ねぇ悠?なんでいつも右手の人差し指に指輪をつけてるの?」
悠は指輪を見つめながら答えた。
「簡単に言えば、覚悟の証だよ。戦うためのね。」
「まぁ、大事な人からもらったからつけてるっていうのが大半だけどね。」
翔がにやにやしながら
「もしかして彼女か、この野郎。」
「違うよ。俺彼女いないしね。前にお世話になった人だよ。」
その話を聞いて、向日葵は何かをつぶやいた。
「彼女いないんだ..。」
「向日葵何か言ったか?」
翔が向日葵の顔を覗きながら言った。
「ううん、何も。」
「そうか?向日葵も疲れてるみたいだし今日はもう遅いから、この辺で解散するか。」
「そうだね。明日も訓練あるし。」
「そうね、もう眠いわ。」
今日のところは解散した。だが、翔は氷室師団長のことを思い出して寝付けなかった。本当は今にも体を鍛えたかったが、我慢して布団にくるまった。
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