第1章2話 黒い霧発生! 魔物到来

ここは東部師団員育成学校。位置にして前の日本の関東地区に位置する、第1・第2師団に入るための師団員を育成する学園である。15歳になると受験ができ、普通科・医療科・オペレーター科の3つの科がある。

毎年、何万人という少年少女が受験し、受かるのは各科100人ずつという狭き門なのである。


今年、この学校に入学する事ができた少年、月風翔つきかぜかけるは憧れの校舎を前にして胸を躍らせていた。校舎前に立っていた翔は後ろから強い衝撃におされ、倒れてしまった。


 「なにすんだよ向日葵!痛いじゃないか。」


後ろを見ると、そこには翔の腐れ縁で幼馴染の朝比奈向日葵あさひなひまわりが悪い顔をして立っていた。


 「いやー翔がぼーっと立っているのが悪いんでしょ。せっかく合格したんだから堂々としてなさいよ。実技審査1位だったんでしょ。」


 「おまえも女子の中じゃ1位だったそうじゃないか。」


 「まぁね、伊達に鍛えてないわよ。」


ドヤる向日葵に翔は少しいらっとした。


 「チャイム前に教室に行こうぜ。」


各々、自分の教室へと向かい、指定された席へと座った。始業まで少し時間があったため翔は、隣の席の人と仲良くなろうと話しかけた。


 「はじめまして、俺は月風翔。君は?」


翔が尋ねると、隣の席の男子生徒は読んでいた本を閉じて


 「あぁ君が実技1位の翔君か。はじめまして、俺はゆう夜岸悠よるぎしゆうだよ。よろしくね。」


 「悠か、よろしく。俺のことも翔でいいよ。」


挨拶を交わした翔と悠はその後、学校についての軽い説明と設備の説明を受けた後に解散だったため、一緒に帰ることにした。一緒に帰っている最中に後ろから向日葵が翔を呼びながら走ってきた。


 「なんで先に帰るのよ、玄関で待っててって言ったでしょ。」


 「あっごめん。忘れてた。」


翔を睨む向日葵だったが、悠に気づくと不思議そうに悠を見つめた。


 「翔、この人誰?」


 「あーこいつは夜岸悠。俺のクラスメイト。」


悠の名前を聞くと向日葵は驚いた。


 「夜岸悠って筆記試験ほぼ満点合格した人じゃん。はじめまして、朝比奈向日葵です。翔とは腐れ縁の仲よ。よろしくね。」


 「よろしく。」


そんな挨拶を交わし、今日のところは解散した。


翌日ー-


この日から授業や訓練が本格的に始まった。授業ではSRMG師団ができるに至った歴史や簡単な戦術、数学や英語などの一般教養などを学ぶ。訓練では1年の間は体力づくりを中心に模擬戦や射撃訓練などを行う。2年生に上がると実際に現場へ行き、団員の戦闘を間近で観察でき訓練のアドバイスももらえる。

今日の実技を終え、着替えているところで翔が悠にある疑問を投げかけた。


 「なぁ悠、第1師団長ってどんな人なんだろな。」


前第1師団長は、今から5年前に魔物の大群との戦闘中に殉職した。それ以降、新たな第1師団長が発表されていないのだ。


 「さぁ?どうだろうな。いろんな噂があって、どれが本当かわからないもんな。」


 「だよな~。弓矢使いって噂もあれば、刀使いって噂もあるしな。俺が先輩に直接聞いたのはでっかい金棒みたいな鉄棍てっこん使いっていう噂は聞いたな。」


 「まぁ、公表してないってことは何かしらの理由があるんだろうよ。早く着替えて帰ろうぜ。」


 「そうだな、今日は一通り訓練したから疲れたよ。」


 「何言ってんだ、模擬戦全勝のくせに。」


軽口をたたきあいながらも着替え終わり、帰ろうとすると警報が鳴り響いた。


 『黒い霧発生!黒い霧発生!育成学校の1・2年は市民の避難誘導、3年は師団員のサポートをせよ!』


 「まじかよ、悠行くぞ。」


 「応。」


魔物は昼夜問わず出現してくる。しかし、出現するときは神出鬼没ではなく黒い霧が発生してから出てくる。だが、出てくる場所はランダムであるため町中に現れたらすぐに避難を開始させないと甚大な被害につながってしまう。

現地に到着した翔達1年と2年は直ちに避難誘導を開始した。


 「悠、今回は何型だろうな?」


 「動員している団員の数から、また獣型だろうな。」


人間界に出てくる魔物は確認されている限りで4種類存在している。

主に群れで現れ、数の力で攻撃してくる獣型・知性を持ち武器や獣型を使役して攻めてくる人型・獣型の力と人型の知性を併せ持った人獣型・人獣型が獣型の力を何種類も併せ持っているキメラ型がいる。

人獣型やキメラ型は一般戦闘員では倒せないほどの強さを持っている。


 「とりあえず、避難を終わらせよう。ここまでこないとは限らないからな。」


 「そうだな。」


翔・悠を含む1.2年生は避難誘導を進めていった。だが、避難完了目前に路地裏からハイエナの形をした魔物が現れ、遠吠え始めた。


 「まずい、翔、先輩方急がないと他にも魔物が来ます。」


 「まじか、避難先へ急いでください。魔物が来ます。」


しかし、ハイエナ型の魔物はすでに四方八方を囲んでおり、じわじわと距離を詰めていった。1.2年生の間は訓練以外で武器を持つことを許されておらず、反撃する手段を持ち合わせていない。次の瞬間、ハイエナ型の魔物は一斉に襲い掛かってきた。

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