第2話 池崎の策略

1本の電話した後、俺はあるビルへと向かった。


 「おかえりなさい社長、準備は整っております。」


 「ありがとう。」


そう、俺は学生でありながら上場企業の社長をしている。いつも親父に何かに挑戦しろとうるさかったから投資やFXをやってみたら大当たりして、儲かったお金を使っていくつかの会社を買収し、新たな会社を立ち上げ上場企業と呼ばれるまでに成長していた。

俺は、秘書の佐々木杏ささきあんずのとともに会議室へと向かった。


 「お待たせしました、これより会議を始めます。佐々木さん今日の議題を。」


 「はい、本日の議題は・・。」


会議が終了し、自室へと向かった。


 「お疲れ様です社長。」


 「お疲れ様。今日は特に問題はなかった?」


 「はい、業務も滞りなく行われています。この後、20時から取引先との面談が1件ございます。準備をお願いします。」


 「よかった。了解、すぐ支度するよ。今日中の業務をデータで送っといて。」


 「承知しました。」


その日の業務を終わらせ、家に帰りついたときには疲れ果てておりすぐに眠りについた。


翌日ー-


学校に登校するといつも元気な白金の顔が曇っていた。


 「あっ、睦月君おはよう。」


 「どうした?元気なさそうだけど。」


 「いや、ちょっとね。」


 「嫌なら話さなくていいぞ。話したくなったら友達とかに話せよ。」


 「うん。」


昼休み――


いつものように屋上に繋がる階段で昼食をとっていると白金が走ってきた。


 「睦月君ちょっといい?」


 「?どうした。」


 「朝のことについてちょっと話したくて。」


 「別に俺じゃなくても。」


 「聞くだけでいいから返事しなくていいから。」


あまりの勢いに根負けして話を聞くことにした。


 「私ね昨日池崎君に告白されて、でも好きじゃないからって断ったの。そしたら、『お前のところの会社覚えておけよ。嫌でも俺と付き合うことになるからな。』って言われて。」


 「池崎君のお父さんの会社ってうちの会社の最重要取引先で取引を取り消されたらしくて。『また取引してほしかったら息子とお宅の娘を婚約させろ。』って言われてどうしたらいいかわからなくて。」


そう言って白金は涙をこぼした。


 「池崎の会社って確か広告会社だったな。」


 「え?うんそうだよ。」


 「成程な。俺から1つ言えるのは白金のせいじゃないよ。池崎と池崎の親父さんがしょうもないってだけ。白金の親父さんも本気で婚約させようとしてないだろ。」


 「うん。パパはどうにかしてやるって言ってくれてるけど。」


 「じゃあどうにかしてくれるよ。信じなって。」


 「うん。」


白金の顔が少し元気になったようだった。教室に帰ると、池崎が取り巻き達に何やら自慢げに話をしていた。


 「もうすぐ、白金ちゃんと付き合えそうだぜ。どのくらい持つかな。」


 「お前容赦なさすぎだろ。」


 「俺は白金ちゃんと付き合うためならなんだってするぜ。持ってるカードは使わないとな。」


 「持ってるやつのレベルは違うな。」


この会話から意図的に取引を停止したことが確定した。念のため、今の会話を携帯で録音した。


 「やっぱり、私のせいだ。」


白金がまた罪悪感で押しつぶされそうになっていた。


 「仕方がないな。白金、親父さんの会社の広告って池崎の親父さんの会社だけ?」


 「うん、確かそうだったはず。」


 「わかった、もう少しだけ我慢しろ。」


 「?うん。」


その日の放課後、白金と池崎の親父さんの会社のことを調べ、会社に出社した俺は営業部の部長をを呼んで話をした。


 「社長お話とは?」


 「急に呼び出してすみません。白金グループの会社のこと知ってますか?」


 「?はい、存じております。勢いはありましたが最近広告の数が減少している会社ですよね。」


 「あの会社の商品についてどう思いますか?」


 「はい、商品自体はよくできていると思います。各商品ターゲット層に合わせて作りこまれてコンプセクトもちゃんとしている。宣伝の仕方だけがもったいないと思っていました。」


 「では、その会社に営業してみませんか?」


 「白金グループにですか?ですか、あの会社の取引先には大手の広告会社が。」


 「情報によると、その広告会社と取引が停止して新たな取引先を探しているそうです。うち会社のまだ大きくなるチャンスだと思います。もし、やってくれるならアポイントメントはこちらで取ります。どうしますか?」


 「是非やらしてください。このようなチャンスは滅多にありません。」


 「わかりました。では準備のほうをお願いします、アポイントメントはこちらでしておきます。」


 「はい、失礼したします。」


正直賭けだった。営業部部長は慎重で無理な営業をしないことで有名だったからこの話に乗らさければならなかった。


 「珍しいですね、社長。社長が営業先を指定するなんて。」


 「まぁね。ちょっとした恩返しだよ。」


 「?」


 「なんでもない。さぁこちらも準備しようか。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る