【第46話】魔王の居場所

ガシイイイイッッ!


コトネが放った砲弾はレオ先輩の腹部、みぞおちを直撃した。


「ぐええええっ」


レオ先輩は、とても人間とは思えぬうめき声を発して、バタリと倒れた。


そして次の瞬間、他の100人近い先輩や勇者たちも、一斉にバタバタと倒れてしまった。


倒れたレオ先輩の体の中から、スーッと光の玉が浮かび上がる。

かと思うと、それは気味の悪いバケモノに変容した。


「よくもやったな! わが名はザカール! 一撃で俺の術を破るとは、きさま何者だ!?」


「私はコトネ。魔王はどこ?」


「ハア? きさまはバカか。そんなことを教えるわけがないだろう」


「教えたほうがいい」


「なんだと……? げっ!?」


ザカールが気づいたときには、すでに3年C組の男女全員が、ザカールを囲んでラケットを構えていた。


「僕たちもいるぞ!」


それは、意識を取り戻した生徒会長、レオ先輩だった。


その後ろには、総勢100人近く。

全員がザカールを取り囲んでいる。


ボルテが叫んだ。


「魔王はどこだ!? いわなければ、今すぐおまえを殺す!」


「くっ……これまでか。仕方がないな……。魔王さまの居場所を教えればいいんだな?」


「ウソをついても無駄だぞ。ウソだとわかった時点で殺す!」


「フン……おまえたちの学校だ」


「な、なにいっ!? グロワール高校に、魔王が向かった……だと!?」


「みんな、こいつを地下牢に連れていってくれ!」


レオ先輩はそう叫ぶと、全力疾走で宮殿に入っていった。


「国王殿下!」


「おお、そなたはグロワール高校の生徒会長、レオといったな。なんと無事であったか」


「ご心配をおかけしました。3年A組とB組、そして7つの勇者パーティーも、全員無事です! 魔王の手下ザカールを地下牢に閉じ込めました!」


「そうか! よくやった! ぜひ戦いのようすを詳しく聞かせてくれ」


「恐れながら、今は時間がありません!」


「なぜだ?」


「ザカールを問い詰めたところ、魔王がグロワール高校へ向かったとのこと。つきましては、馬獣をお借りしたいのです」


「もちろんだ。宮殿内の馬獣、すべて使ってよし。7つの勇者パーティーも連れていけ。ただちにグロワール高校へ向かうのだ!」


「ありがたきお言葉!」


   *


夜の旅には危険が伴うが、そんなことをいっていられる場合ではない。


レオ先輩を先頭にして、宮殿内にいたグロワール高校の生徒全員と7つの勇者パーティーは、馬獣に乗って出発した。


「みんな、急ぐんだーっ! 休憩ナシで全速力で飛ばせば、夜明けごろにはグロワールに着く!」


「おおーーーーーっ!」


コトネは馬獣の手綱さばきもお手のものだ。

俺は馬獣を扱えないので、コトネの背中にしがみついている。


宮殿で栄養豊富なエサを与えられ、鍛え上げられた馬獣の脚は驚くほど速い。

アンヌ先生の飼っているポイポイとは比べものにならない。


グロワール高校の生徒数は、確か450人前後。

最精鋭の3年A、B、C組が欠けているとはいえ、教職員の中には3年生と対等に戦える者もいるはずだ。

いくら魔王でも、すぐに全滅させることはできない……きっと。


俺たちは、とにかく急いだ。


「コトネ、さっきから浮かない顔をしてるけど、大丈夫か?」


「おかしい」


「なんだ!? 何がおかしいんだ?」


「なぜ魔王はグロワール高校を狙っているのか」


「そんなの決まってるだろ。王宮が派遣した7つの勇者パーティーを全滅させたんだから、次は勇者を育成している名門、グロワール高校の生徒を全滅させれば、もう魔王は敵なしになるだろ」


「だったらなぜ、このタイミングでグロワール高校を襲う? 3年A組からC組も揃っているときに一網打尽にしたほうが効率がいい」


「うーん……。さすがに魔王も、全員を一度にやっつける自信がなかったんじゃないか? 3年生の一番強い連中は手下のザカールに任せて、自分は残りをやっつける作戦……あれ?」


「おかしいだろう。それをやるなら、自分が3年生と戦って、手下に下級生を任せるはず」


「確かに。……どういうことだ?」


「だから……おかしい」


コトネがおかしいという理由はわかったが、魔王の考えていることなんて、人間の俺がいくら考えたって、わかりっこないだろう。


「とにかく急ごう! 行けばわかる!」


「……」

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