【第40話】死刑宣告!?

敵を傷つけずに、しかも派手に倒す方法……。

そんなものがあるのだろうか。


いくら考えても思いつかない。


「コトネ、何かいいアイデアはないか?」


「ない」


「モナ、エルミー、何かいい考え……」


「そんなの無茶だよ」

「思いつかないわねェ」


くっ……。

仕方がない。


「コトネ、とりあえず適当な技名を叫ぶから、それっぽい派手な技を出してくれ。ただし……寸止めで頼む」


「寸止め?」


「つまり、先輩たちには砲弾を命中させないでくれってこと」


「……わかった」


俺は右腕で握ったラケットを左腕に交差させた。


ボルテ、ザンボ、ダイタンの3人は、一瞬キョトンとしたが……。


「なんだ、その構えは?」

「わっはっは!」

「ぷっ。1年生クン、そんなんで脅してるつもりか?」


笑わば笑え。


「いくぞ先輩! 正統なるゴールドクロスの咆哮! 神々しき龍のブラッドスター砲弾!」


俺は思いつく限りの凄そうな技の名前をテキトーに叫んだ。


「な……なんだって?」

「すげえハッタリ!」

「中二病おそるべし!」


ボルテたちは腹を抱えて笑っている。

だが、次の瞬間。

3人はぎょっと目を見開いた。


クロスさせた俺の左腕とラケットが、まるで輝く十字架のごとく光を放ったのだ。

次の瞬間、ラケットの先端から、天井に向かって稲光がほとばしり、雷鳴がとどろく。


バリバリバリッ!


「うおおおおーっ」


叫び声とともに、俺は砲弾を投げ上げた。


天井に反射して戻ってきた稲光が砲弾に命中。

砲弾が、まるで太陽のような強烈な輝きを放つ。


「な……なんだ!?」

「まさか……ハッタリじゃなかったのか!?

「こんな技……見たことないぞ!?」


「いっけーっ」


俺は砲弾を強打した。

砲弾は、まるで輝く龍のような形の軌跡を描きながら、ボルテたちに向かって飛んでいく。


「くっ……これは!?」

「やばいよボルテ!」

「わーっ。とりあえず伏せろ!」


あわてふためくボルテたちに襲いかかる砲弾。

3人は、一様に頭を抱えて地面に伏せた。


砲弾は3人の頭部をかすめて、そのまま直進。


ズゴァーーーーーン!


爆音とともに体育館の壁をぶち破り、直径5メートルほどの穴をあけてしまった。


しばらく、ぼう然とその穴を見つめて立ち尽くしていたボルテたちだが、我に返って俺たちのほうに向き直った。


「や……やるじゃないか1年生」

「だ……だが、当たらなければどうということはない!」

「そ……そうだ! 当たらなければ……。でも、もし当たったら……?」


3人は再び大きな壁の穴を見つめて青ざめた。


見張りの衛兵の顔を見ると、同じように目を見開いている。


「コトネ。さすがだな」


俺はラケットの先端あたり──コトネの頭だと思われる場所をよしよし、となでてやった。


「あ……そこは……そんなふうにさわらないで!」


「えっ、ここ頭じゃないの!? すまん、こっちか?」


「いやっ……だめ!」


「こっちかな」


「あふっ……」


調子に乗って俺がコトネ──赤いラケットをあちこちまさぐっていると、衛兵の怒鳴り声が響いた。


「おい、おまえたち! 宮殿の体育館に穴をあけるとは、懲罰どころじゃ済まんぞ!」


しまった、やりすぎた!

アンヌ先生も「あちゃ~」と、これはさすがにフォローできないといった顔だ。


「モナ、エルミー、とりあえず謝ろう」


俺たちは、アンヌ先生とともに衛兵に頭を下げた。


「ごめんなさい! 俺たち、悪気はなかったんだ」


すると、衛兵はミケンにしわを寄せた。


「フン、悪人はみんなそういう言い訳をするものだ。国王は非常に厳しいお方だ。宮殿に傷をつけて生きて帰れた者はいない。おまえらには死をもってつぐなってもらう」


そのとき、威厳のある低い声が響き渡った。


「そのとおりだ!」


扉を開けて現れた声の主は──。


白髪に白ひげ、恰幅のいい体に、黄金のマント。

いかにも高貴なオーラをまとった老紳士だった。


背後には、10名以上の衛兵を従えている。


「こ……国王殿下!」


見張りの衛兵は敬礼し、急いでひざまずいた。


「フン、大きな音がしたから何ごとかと思って来てみれば、その小僧たちが壁に穴をあけたのか!」


これが国王か。

とにかく俺たちは謝るしかない。


「すみません! わざとじゃないんだ!」

「ごめんなさい!

「許してください! 弁償しますから!」

「そうです。この子たち、本当はいい生徒なんです」


国王はアンヌ先生に視線を向けた。


「おまえが引率の教師か?」


「はい……本当に申し訳ございません。すべて私の責任です」


「そうか。ならば、おまえにも死んでもらわねばならんな」


「……! 国王殿下! 生徒は悪くないのです。私は死刑で構いませんが、どうか生徒たちにはご慈悲を……!」


「そういうわけにはいかん。示しがつかんからな。4人の命はもう、ないものと思え」


「そんな……」


「彼らは確か、1年生だったな」


「は……はい」


「そうか。まだ高校生になったばかりか。かわいそうだが──」


国王は俺たちにくるりと背を向けた。

俺たちの命は、こんなところで終わるのか?


そんなのはいやだ。

なんとか脱出する方法は……。


俺が思考をめぐらせていると、国王が言葉を継いだ。


「──この戦況だ。かわいそうだが、君たちにも命を捨ててもらうしかあるまい。1年生とその教師の4人は、すぐに3年C組とともに魔王討伐の準備を始めるのだ!」


国王の言葉を受けて、体育館内は3年C組の先輩たちの拍手喝采であふれかえった。

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