【第29話】逆襲の2人
コルマンドオープン選手権大会。
全国各地の草トーナメントで好成績を残した者だけが出場できる、草トーナメントの中では最もレベルの高い大会だ。
俺とモナは、その会場に足を踏み入れた。
「ねえヤッちゃん、私、草トーナメントなんて出たことないんだけど、本当に大丈夫かな」
「任せろ。俺がカバーする」
「夏休みは私といろいろしたいっていうから、何かと思ったら、この試合のことだったの?」
「そうだ」
「私はてっきり……」
「ん?」
「ううん。まあ、いいけど。ヤッちゃんとダブルス組むのも初めてだし、ドキドキするなあ」
そうなのだ。
この大会は、いつものような1対1で戦う試合ではなく、2人がペアになって対戦するダブルス形式なのだ。
実戦──つまり、魔王や魔物と戦うときは勇者パーティーを結成してのチーム戦になるのがふつうなので、レベルの高い大会になるほど、実戦に近い試合形式をとるようになる。
このコルマンドオープンより上の大会になると、3人以上の団体戦形式の試合が大半だ。
「1回戦の相手は無名のやつみたいだから、たぶん大丈夫だろ」
「無名って……ヤッちゃんだって、まだ1つしか大会に出ていないんだから無名でしょ! 私なんて初出場よ。よくこの大会に出られたと思うわ」
「いちおう前の大会は俺、優勝してるし。あと、今回は『グロワール高校所属』と書いて申し込んだから、そういうのも考慮されてるんだろ」
「なるほどね。さすがは名門校ね」
俺たちは大会本部に行き、受付の青年に名前を告げた。
「ヤニックさんとモナさんのペアですね。……あっ、対戦相手にちょっと変更があります」
「1回戦の相手が変わるのか?」
「ええ、そうなんです。昨日、予定していたペアがデフォールト──つまり棄権を申し出てきましたので、そこに主催者推薦で新たなペアが入りました」
「ふーん。そうなのか。で、対戦場は何番?」
「17番です」
すぐさま俺が対戦場に向かおうとすると、モナがいった。
「ちょっとヤッちゃん! 相手が誰なのか聞かないの?」
「聞いてもどうせ知らないやつだし、行けばすぐにわかるだろ」
「それはそうだけど……戦う前に、少しは対戦相手の情報を下調べしたほうがいいんじゃない?」
「いいよ。戦えばわかる。いくぞ」
「もう! 知らないよ!」
17番対戦場に到着すると、すでに相手はベンチに腰かけていた。
「あっ、きたきた! ヤニックさん!」
「げっ!? クラリーヌ先生!? となりにいるのは……げげっ!? ロイホ!」
「やあ。2人とも、久しぶりだな」
「なんでロイホとクラリーヌ先生がここに!? どういう組み合わせだよ!」
すると、ロイホは憎々しげにいった。
「このあいだは、よくもやってくれたな。おかげで風邪を引いちまったが、そんなことで学校を休んでいたわけじゃない。おまえにリベンジする機会を狙っていたんだ」
「で、クラリーヌ先生と手を組んだのか?」
「そうだ。新任の先生がおまえにやられたという噂を聞いて、連絡をとったんだ。一緒にヤニックを倒さないか、とね。そんなとき都合よく、おまえがコルマンドオープンに申し込んだというわけだ」
「だけど、もともと俺たちの1回戦の相手は他のペアだったはずだぞ」
「ああ、彼らには不運な事故に見舞われてもらった。俺たちが試合に出るためだ。仕方がない」
「なんてやつだ……!」
こいつ、腐ってやがる。
復讐のためには手段を選ばないつもりだ。
そのとき、クラリーヌ先生が申し訳なさそうに口を開いた。
「ヤニックさん、あなたに恨みはないのですが、どうしてもあなたを倒さないといけない、大人の事情がありまして」
「大人の事情って……あんた12歳だろ! 子どもだろ!」
「えっ、私って子どもっぽい? 恋愛対象にはならない?」
「そういう問題じゃない! もういい! モナ、さっさと試合を始めるぞ!」
「……うん。だ、大丈夫かな」
それは俺のセリフだ。
いったいどうなるんだ、この試合!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます