第24話 1547年(天文十六年)2月 備後国 三次郷
銀兵衛は
「安芸の八本松にいた鉢屋から知らせが届いた。見慣れぬ二人の男が槌山城に入り、昨日城を出て北に向かったと。今日あたり三次に現れるかもしれぬ」
「ほう、いくら取られた」
「2貫」
「チッ、あのやろう足元みやがって」
情報料として2貫は高い、せめて1貫200文だろと銀兵衛は悪態をつく。
鉢屋は平将門の乱のとき将門に与した
よって鉢屋は山陰山陽地方に散らばっているが各々が独立、悪く言えばバラバラであり、状況によって敵にも味方にもなる。非常にドライな関係だ。
「八本松からだと乃美で西に向かい江の川伝いに下るか、そのまま北上して美波羅川を下るかだな。小八兵衛、江の川に向え。俺は美波羅川に向かう」
銀兵衛は美波羅川と馬洗川の合流地点に来た。南の小高い薮にひそみ美波羅川沿いの道を見張る。鉢屋は目がいい者が多い。総じて身体能力が高いのだ。
そろそろ日が落ちて来た頃くだんの二人がやってきた。そのうちの一人の顔を見たとき、銀兵衛は思わず声が漏れた。
「宍道隆慶…なぜ」
二人はそのまま比叡尾山城に入っていった。
「銀兵衛、そっちに来たか」
小八兵衛が戻ってきて声をかける。
「ああ、なんと二人の内一人は宍道隆慶だ」
「それは…えらい大物が釣れたな」
「小八兵衛、宍道の監視を続けろ。俺は一旦戻って銭を持ってくる」
「わかった」
銀兵衛は富田に向かいながら思考を巡らす。(いくら必要だ。場合によっては石見と備後の鉢屋全てに声掛けする必要があるか。さて、比叡尾山城からどこに向かう…)
やっと面白くなってきた。こうでなくっちゃな。銀兵衛の足取りは自然と速くなっていった。
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