第20話 洞窟の穴と水銀の秘密

 なんとなーく、魔王様と距離を取りつつ、風呂をおえたおれたちは、おれの部屋へと向かう。ちなみに、部屋の中もすんごく綺麗に片付いていて、ここもみんなが掃除してくれたんだな、って思ったら、ちょっと泣けてきた。


 しかも、部屋にはきちんと四人分の食事まで用意してくれているではないか。


 おれが腹を空かせているわけだから、蓮華とルビーだって腹ペコのはず。まずは無言で食事をしつつ、食後の白湯を飲んで生き返ることができた。


 まずは、ルビーが、自分の出自を教えてくれた。ルビーの婆さんは占い師で生計を立てていた。あの洞窟のぬしでもあった。ある日、婆さんは突き当りの洞窟の壁に不思議な穴を見つけた。そのわずかに小さな穴からは、とてもあかるい光があふれていたため、その洞窟は厳重にドアを作って鍵をかけ、封印したという。


 婆さん曰く、『どこかの世界で天変地異が起こると時空が歪み、魔族ではない者が紛れ込んできてしまう』という言い伝えがあった。そして、異邦人は必ず災厄をもたらすものと、信じられていた。


 そして、恐れていたことが起こった。封印したはずのドアが乱暴にこじ開けられ、中から人間が三人、出てきてしまったのだ。どうやらその穴から出てきたらしい。


 三人は婆さんを人質に取ると、魔王城を制圧に行くという。だが、婆さんは止めた。煩わしく感じたのだろう。元々剣の腕は立つユウキに殺されてしまった婆さんだが、死ぬ前に彼らに呪いをかけていた。もし、彼らがこの世界から去る時、人間界へと繋がる穴は完全に塞がること、と。そして、洞窟の崩落はその呪いから来ているのだとわかった。


「鏡は? なぜ水銀になったんだ?」

「おそらくこの鏡にも、似たような呪いが混ざっていたんじゃないかな? 今後は気安く人間界に行き来することはできなくなるし、ミナト様の病気が治ったかどうかも確かめようがないけど」


 ルビーの説明に、魔王様は深くため息を吐かれた。


「それでかまわない。もう、おわったことだ。我の仕事は、魔界をふたたび肥えた大地に戻して、民を飢えさせないことにある」


 そう言うと、魔王様はルビーと蓮華の頭を優しくなでた。


「危険な任務に協力してくれて、感謝している。そなたたちはこれからも、我らと共に、この城にいて欲しいと願う」


 えっへん、とばかりに得意げな顔を見せるルビーと、笑みを浮かべる蓮華。二人はこの先も仲良しでありますように。


 そうしておれと魔王様は、部屋を後にするのだった。


 つづくぞぉー!!

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