第14話 もう一人の、養子
泥まみれになったおれへ、コウモリ族のひとりが飲み物を差し入れしてくれた。
「ありがとう。助かるよ」
「助かるのはこっちですよ。魔王様の側近直々に救助してもらえるなんて。けど、もう暗くなってきましたし、皆様はお城に戻られた方がよいと思いますよ」
大丈夫、と言いかけて、呆然と立ち尽くしている魔王様たちを守らなきゃ、という気持ちに襲われる。こんな時、誰よりも早く救助に向かうはずの魔王様が、直立不動で立っている。困ったな。そんな顔されちまったら、他の連中に見られちゃうじゃんかよ。
「それじゃ、おれは一旦城に戻って、魔族連れてまた来るから」
「デルタ様、感謝してもしきれません」
「水くさいこと言うなって。おれたちはみんな、魔族だろう?」
「正直に言うと、魔王様はわざわざ一度城を人間なんかに明け渡したことで、我々には疑問がありました。そんなに簡単に城を明け渡すなんてって。でも、こうして助けてくれたし、あの子のことを養子にしてくれるそうじゃないか。それは助かるってみんなが思っているさ」
おれは、姿勢正しく待っている蓮華に手をあげてあいさつする。
「じゃあやっぱり、あの子の両親が殺されたって話は本当なのか?」
「ああ。それにルビー。あいつは殺された親分の子供だから、この先どうなることか」
おれは、うーん? と頭をひねった。
「じゃ、ルビーも養子にするか?」
「へ? そんな簡単に!?」
「そんなに悩むことでもないだろう? 子供が親を亡くして困っていたら、助けてやるのが大人としての役目なんじゃないのか? むしろ悩むものなのか?」
驚いたおれへと、コウモリ族たちが次々と肩を叩く。
「あんた、そういうとこすごくいいと思うよ」
「本当だ。おれも子供だったら、あんたの養子になりたかったね」
「将来的には、そういう子供たちを集めた施設みたいなものを作りたいって、魔王様と相談してるんだよ」
おれが言うと、魔王様は、はっとして、魔王の顔に戻る。その美しい顔に影を落としているのは、やはりミナトなんだろうな。
「ああ。そういうことで話を進めている。ちなみに生存者の救出には、城から助っ人を向かわせることにいたす」
「それはありがたい。それじゃ、生存者を助けたら、今度はその施設作りの方にも声をかけてくれよ。
おおーっ!! と、暮れて行く空に怒号が響いた。
その傍で、ルビーがポツリと、おれも養子にだって? と、きょとんとしているのだった。
そんじゃま、そういうことでつづく!
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