第13話 少年老い易く学成り難し

『このぉ、ミナトの癖に、生意気だぞっ!!』

『やめろよっ!! 殴るんならおれを殴れっ!!』


 そこに、イカリがミナトをかばうように前に出た。学校の門前でもみくちゃになる一同。


『やめなさいっ!! あんたたち、学校になにしに来ているの!? 勉強でしょう!? だったらそんな真似するんじゃないわよっ!!』


 おさげ姿の女の子は、まさか、マリーなんじゃ?


『やっべ。正義感のマリーだよ。撤退、撤退』

『あんたたち、顔覚えたからね。金輪際、この子たちに手を出したら許さないんだからっ』


 わーっと声を上げて去って行く少年たち。まったく。しょうがないな。


『君たち、大丈夫?』


 制服についた埃を払い落としながら、少女が優しく微笑む。


『あたしは剣道部のマリ。君たちよりひとつ年上。みんなは正義感のマリーだなんて言うけど、言いたい奴には言わせておけばいいの。それより、君たち、剣道部に入らない? えっと、ミナトくんだっけ? 君は、マネージャーってことで。ああ、きつい仕事はさせないからさ。それよりもイカリくんだよ。すごいね、兄弟をかばって、代わりに殴られるなんて』


 やっぱりマリーだ。まさか、人間界にいるなんて。そんなマリーの顔を見て、ポロポロと涙をこぼすイカリ。どした?


『おれ、悔しいんだ。ミナトがそんな病気だったなんて知らなくて。勝手に嫉妬して。おれ、前世でもこんなで、魔王にすらなれなかったし』

『おお!! 君は、前世の記憶があるんだ? それはすごい!! 話ならいくらでも聞くよ。なんでも話して』

『おれ、強くなりたいっ!! ミナトを守れるように、パパたちのことも、恥ずかしいと思いたくない。もっと、強くなりたいんだ。剣道部に入れてくださいっ。おれ、必ず強くなるから』


 青春だな。そこで、すべてがおわったのか、鏡は粉々に砕け散った。イカリはおそらく、改心するのだろう。ミナトの病気は気になるところだが、人間界にはきっと、いい治療法があると信じたい。


 鏡も木っ端微塵に砕けたし、あとは穴を塞ぐだけ――?


 と、油断しているところで洞窟が全体的にグラグラと崩れ始めた。慌てて外に向かうおれたち。


「魔王様、蓮華、それに君も!! 早く外に出るんだっ!!」


 おれは主に三人を抱えるようにして洞窟から外に出た。瓦礫の中に、まだ生きているコウモリ族がいるかもしれない。


 おれは、三人に危ないからここいいるよう伝えてから、助かったコウモリ族たちと、生きている奴らの救助に向かった。


 これはこれで、つづくのだ



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