第12話 そこから更に十四年が経過したようだ

 場面場面がかちゃかちゃと切り替わって、双子たちが健康ですくすくと成長しているのがはっきりとわかった。


 ただやはりイカリの方は、心の中に抱えているものがあるらしく、表情が暗い。


 双子の兄のミナトは、事あるごとにイカリを気にしているけど、肝心のイカリは聞く耳を持たない。


 この世界のイカリも、やはり孤独なのだろうか?


 一人、自分の部屋の中で、イカリが立てかけている姿見を見つめていた。一瞬、イカリと目があったような気がしたが、どうやら気のせいらしい。


『ミナトはずるい。社長の椅子はおれに譲ると言っていながら、事あるごとに母さんに呼び出されてる。きっとあいつが、会社を継ぐんだろうな。それにひきかえこのおれは』


 ふっと意地の悪い笑顔を鏡に向ける。


『おれ、知ってるんだ。前世の記憶があって、おれたちは魔界に生まれて育ったんだ。あのまま、父さんがしっかりしていたら、おれが魔界の王様になれたのに。なのに、どうしてこんな場所にいるんだよぅ!!』


 まさか。魔界にいた頃の記憶が残っているというのか!? それとも、ただの妄想なのか。わからないが、おれたちの手の届かない場所で、イカリが悶々と悩んでいることはわかる。


 どうすればいい?


 その一方で、ミナトも重い病に苦しんでいた。度重なる高熱。その都度ユカリに連れられて病院に行っているのだということをイカリは知らない。


 ある朝、ミナトとイカリを乗せた車が学校の近くに止まる。運転手はユウキだ。


『今日もありがとう。いってきます』

『いってらっしゃい。どうかお気をつけて』


 双子を置いて、車が走り出した途端、同級生と思わしき少年たちが近づいてくる。


『あーあ。お坊ちゃんは毎日の送り迎えで楽でいいなぁー』

『でもこいつら、生みの母親に見限られて、ゲイのカップルに育ててもらってるって噂だぜぇ』

『うげぇ。じゃ、もしかしてお前らも? やめてー。おれたちをそんな目で見ないでー』


 ギャハハとはしゃぐ少年たちを前に、イカリが拳を握りしめた時だった。


『それのどこが悪いのか、ぼくには全然わからないね』


 ミナトだった。


『ぼくには内臓に重い疾患があって、そのせいで送り迎えをしてもらっているだけだし、イカリだけを徒歩で登校させるのが嫌なだけだ。それに、パパたちが何人いようが、それはうちの勝手だろう? うらやましいのはわかるけど、そういう言い方はどうかな? あと、ぼくたちは初恋もまだだし、それに、選ぶ権利もあるんだから、間違っても君たちのことは選ばないから安心していいよ』


 ミナト。なんとたくましく育ったんだぁ。チラリと魔王様の表情を伺えば、切なそうに目を伏せている。ああ、やっぱり。魔王様は、ミナトのことが好きだという自覚があるんだよな。だからそんな、恋する乙女のような瞳でミナトを見るんだ。


 だが、鏡の中は意外な展開になっている。


 内臓に重い疾患を抱えているというミナトの胸ぐらを、少年たちがつかんでいるのだ。


 ハラハラしながら、つづくぅー!!

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