第11話 人間界では、それから数十年過ぎたようだ

 そこで、画面が切り替わるように一旦暗くなる。どうしたんだ? ミナトとイカリは? 生まれてこれない境遇なのか? それとも!?


 少し大人びた顔のユカリが、純白のドレスに身を包んでいる。そんな彼女をエスコートするのはおそらくだいちゃん。二人ともすごく幸せそうだ。たくさんの人間たちが二人を祝福しているのがよくわかる。


 そんな喧騒の隅の方で、ユウキとコウキが人目をはばかるように手を繋いでいた。


 少しすると、また画面が切り替わる。また、あの白い部屋だ。けれど今度は、部屋の中にたくさんの赤ん坊がいて、ユカリとだいちゃん、それにユウキとコウキが廊下で並んで赤ん坊を見ている。


『どうしよう!? あたし、双子なんて育てられない!!』


 ああ、これはいわゆる産後鬱みたいなものかな? 人間も魔族と同じような状態になるんだな。けど、どうするんだ。おそらくこの生まれたての双子の赤ん坊のうちの誰かがミナトで、誰かがイカリなのだろう。


『大丈夫だよ、ユカリ。おれも手伝うから』

『だいちゃんはオムツ取り替えるだけじゃない!! 授乳するのはあたしだし、会社も経営しなくちゃいけないし、社長としてそういつまでも休めないのよ』


 そんな二人を見て、顔を見合うユウキとコウキ。


『あの、もしよかったら、おれたちに育てさせて欲しいんだけど』

『はぁ!? なに言ってるのよ!? この子たちはあたしの子供なの。あんたたちに育てられたりしたら、いろんな意味でいじめられるわ』


 そうまくしたててから、ユカリは小さくごめんなさい、と謝った。


 ああ、またすれ違うのだろうか。赤ん坊にはなんの責任もないのにな。


『そうだ。いいことを思いついたよ。お二人にも家に住んで貰えばいい。部屋は余ってるんだし、両親が来る時だけはどこかに行っていてもらうとか。そうすれば、二人にも子育てを手伝ってもらえるし、会社の役員として、これからも活動してもらえるじゃないか』


 だいちゃんは、これこそが名案、とばかりに声を張ったが、肝心のユカリは乗り気ではなさそうだ。悲しそうに眉を下げている。


『けど、二人には悪いけど、そういう人たちに育てられたりして、子供たちに悪い影響がないかしら?』


 ユカリはかたくなだな。素直に助けてもらえばいいのに。


『そのためにも、二人にはちゃんとした仕事を与えて、家にいるという設定を徹底しないとな。もちろん、おれも手伝うから』

『そう? ならいいけど。もし、もしよ? 子供たちに悪い影響が出てきたら、二人には出て行ってもらってもいい?』

『かまわないよ。それに、おれたちは正式に結婚したわけじゃないし、外ではこれまで通り、ノンケのフリを貫くから』


 ユウキの声は、心なしかさみしそうに響いた。


 人間って、思っていたのとだいぶ違うんだな。つづく。

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