第8話 ふたたび、洞窟へ
さて。洞窟内部もだいぶ荒れ果てていた。なにしろ、魔王様が覇権を取り戻したのだ。コウキにまつわるあれやこれやが洞窟の外へと放り出されていた。
「すっげぇゴミの山だな。コウキ、本当に不憫な奴だったぜ」
そのゴミは、コウキが使っていた人間界から運び込んでもらった鏡台だったり、机や椅子、蝋燭まである。高価な装飾のものは、さすがにちょっともったいないなとも思うが、人間界の物のせいで、魔族が人間界に興味を持ったら大変なことになる。微妙な香りの芳香剤とかも捨てられていて、なんとも言えない臭いが加速していた。
ここまで、おれと魔王様との会話はない。どうした? おれ、またなにかやらかしたか? それとも本気で蓮華との仲を疑っているのか? 目さえあわせてくれないのは、なんでなんだ?
不安な気持ちをまぎらわすように、松明を持った蓮華の後へとつづく。
洞窟の途中で、蓮華と同じくらいの年のコウモリがいた。二人はバツが悪そうにうつむきあって、声をかけることすらない。きっと大切な友達だったのであろうことくらい、蓮華の顔を見ていればわかる。
まぁいい。ここは自分たちの用事を先にすませてしまおう。
そうして、だいぶ進んで突き当たったそこには、粗末な木の扉が開け放たれていて、中はすっかりもぬけの殻だった。
いや、あきらかに誰かがいたような形跡は残ってはいるのだが、不自然なくらいに掃除されていた。
きっと、コウキのにおいがついた場所を少しでも残しておきたくないのだろう。
まぁこれも、しょうがないことだが。
「ここか? 蓮華」
うん!! と蓮華が元気よく返事をする。こいつはさぁ、超音波かなにかで、仲間にこれからおれたちが洞窟に行くぞー、って連絡しておけば、邪魔者なはずのおれたちを消すことくらいできたってのに。
くっそう。それに気づいちまったら可愛いじゃないかよ。なんか、さっそく親の気持ちになっちまった。
「ここのね、これ」
蓮華は遠慮なく、洞窟の壁を指先でつっつく。蓮華の肩の高さほどのそこは、なんの穴の形跡もなかった。
「そこじゃないよ」
「……ルビー」
さっきのコウモリ坊やだ。蓮華と違って、だいぶ愛想がないが、おれたちのことをだますような気配は感じられない。
「そこじゃなくて、もう少し下。ここだよ」
その坊主がつっついた壁から、ほんのわずかなあかりが漏れる。
「本当だ。ルビー、どうしてわかったの?」
「わかるさ。お前の背が少し伸びたから、それで間違えたんだろう?」
そっかぁと安堵の声を漏らす蓮華。そこへ、なんのためらいもなく、魔王様が魔剣を鞘から抜き取った。
さーてさて、次回もつづくのだぁ
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