第7話 蓮華の過去

 廊下に出るなり、どうやら立ち聞きしていたらしい大人のコウモリ族を二人捕まえて、おれと魔王様の足代わりにする。蓮華は自分で飛べるよな?


「よぉ、ガキ。お前、上手いことデルタ様に取り入ったな」


 城外へ飛び立つと、おれを乗せたコウモリがさっそく蓮華をからかう。まったく、仕込んだのはお前らなのか?


「おい、蓮華にいやらしいことをさせようとしたのはお前らか!? だったら、ただじゃすまないぞっ」


 おれはを背に乗せて飛んでいるコウモリの後頭部をどついてやった。コウモリ族は基本丈夫にできているから、これくらい痛くないはずだ。というか、罰くらい受けて当然だ。


「や、やだなぁ。違いますよぉ。けど、どうしてこの子供を養子にしようなんて思ったんですか?」

「だって、両親が殺されて帰るところがないとか言うから」

「ああ!! お前、あの時の子供か!」


 うん? なにか知っているのか? だが、蓮華は決まりが悪そうに暗い顔になる。


「こいつの家族を殺したのは、あんたたちの前でおれたちに殺された親分だったんですよ。なんでも、洞窟の外にすっごい美少女コウモリがいるってんで。でも、家族はかたくなにこいつを手放さないと言い張る。で、バッサリと」


 あー、ごめんな、蓮華。知られたくなかったよな。そんなこと。


「でも、ぼくは女の子じゃなかったから、親分に嫌われて。でも、コウキ様には女の子だと思われていたから、手を出されずにすんだんです」


 まぁ、不幸中の幸いってことかな? でもそれならなおさら、悲しい思いをしてきたんだな。


「蓮華。これからはきっと、楽しいことがあるさ」

「どんな? 魚釣りとか、川遊びとか、してもいいんですか?」


 パァァっと、花が咲くような笑顔を見せる蓮華を見て、ああ、こいつもひとりで外出させるのは禁止だな、と悟った。また、どんなアホな奴に連れ去られないとも限らないからな。


「いいぞ。だけどそれは、必ずおれも一緒の時に限る。じゃないと、いざとなった時に助けられないからな」

「うわ。ありがとう、デルタ様!!」


 そうして話をしているうちに、洞窟が見えてきた。


「ありがとうよ。君たちはここで待っていてね」


 おれが声をかけると、コウモリ二人はははーっと頭を下げた。


 さてさて、洞窟は次回へとつづくのだぁ

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