第6話 蓮華
「デルタよ、ユウキたちが生きているだと?」
そこか。あえてそこだけを切り抜いたか。いいけど、別に。けど、これはおれの仮説でしかない。
「この部屋には、コウキが魔法をかけた見たいものを映す鏡があります。これを、人間界へとつづく穴とくっつけてみたら、あいつらが本当はどうなったのか、そのつづきっていうか、真実が明らかになるかもしれません。だってそうでしょう? 誰も、パネルが落ちてきて死んだ、という確証はない。もしかしたら生きている可能性だってある。だから、双子が生まれた。リアルと直結しているのならば。だって、気づいたら魔界にいたって言ってたんだからさぁ」
おお、そういえば、と魔王様が天井を仰ぐ。そういやまだ、掃除の途中だったな。汚ったない天井でごめんなさい。
「さぁ、坊主入れ」
「デルタ様!! ぼくを養子にしてくれるって話は本当ですか?」
さっすがコウモリ。優れた聴覚だな。
「ああ。これからはおれの元で暮らすといい。だが、間違えるな? お前は王子ではない。なぜならおれは魔王様の僕だからだ。つまり、おれの小間使いから初めてもらう。それと、勉強もするんだ。いいか?
レンゲ? とコウモリ少年が首をかしげる。
「お前の新しい名前だ。これまでがどうだったのかは聞かない。だから、これからは真っ当に生きることを学ぶんだ。じゃなきゃ、すぐに追い出すからな?」
「はいっ!! デルタ様」
おほん、と魔王様の咳払いが聞こえた。
「そうだ。それで蓮華は洞窟の穴を通って、人間界に行き来していたんだったっけ?」
「はい。デルタ様。だからぼく、穴の場所もわかります」
「よしっ!! それじゃ、案内してもらおう」
「おー!!」
盛り上がるおれたちから、そっと目をそらす魔王様に気づいていたけれど、一応誤解は解いたつもりだし、やましいことはなにもない。それどころか、蓮華はあれこれ気づいて頭が良さそうだし、これから色々と役に立ってくれそうだ。
それなのに、魔王様はどうしちまったんだろう?
まだ、おれのことを怒っているのだろうか?
それとも。
誰もいない風呂場でなら、どうなってもかまわない、とか、そんなことを考えていたのだとしたら?
ないない。魔王様は高潔なお方だ。そんな個人的なことをしている場合じゃないってことくらい、ちゃんとわかっている。
けど。だったら、なにをそんなに考えているのだろう?
おれにもわからない、魔王様の心。
だが、今はこうしている場合ではない。鏡のカケラの一部を布で包んで、三人で部屋を出るのだった。
なんだかもやもやするからつづく。
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