第5話 やましいことは、なにもない
「すまない。取り込み中だとは知らずに――」
おれは、魔王様を抱きしめて、部屋の中に招いた。その衝動のまま、コウモリ少年へとウィンクする。
「悪いが、少しの間、廊下で待っていてくれない? すぐおわるからさぁ」
「いやらしいことをするの?」
「しないよ。それでもって、子供がそんな口を利くんじゃありません」
おれが言うと、コウモリ少年は少し頬を膨らませて廊下に出て行った。
「本当に申し訳なかった。そうだと知っていたら、ここには来なかったのだが、先ほどのことが気になって」
おれは、人差し指で魔王様の風呂上がりプルプルな唇を押さえつけた。ん、もう限界。
「あなたが今、なにをどう勘違いしているのかよーくわかっているけれど。どうかおれのことを見くびらないでくれるかなぁ?」
やばい。
「今の少年は、おそらくコウモリ族の誰かにそそのかされておれんとこに来たんでしょうよ。そんでもって、そういうやり方をおれが嫌っているのをあなたはご存じなはずだ。そしてなにより、おれはあなたを裏切らない。裏切られることはあったとしても、あなたが待てと言うのならば、何百年だろうと、何千年だろうと待ってやるさ。おれをそこいら辺のつまらない魔族と一緒くたにしないでほしいんだよ。だって、おれはさぁ。どんなことを言われたって、あなたのことが好きで好きでたまらないんだからさぁ。だから、ちょっと距離を取られたくらいで、すぐ他の奴でごまかしちまおうなんて考えはこれっぽっちも持てない。これから先も絶対に、だ。だって、あなたの代わりになんて、誰もなれっこないんだし、そんなのは全然見えてないから」
言った。ひと思いに言ってやったぜ。
きょとんと可愛い顔をした魔王様が、愛しくて、その頰に手を置きたい。でも、今は我慢するんだ。
今、自分でそう言ったんだから。
「それと、今決めたんだけど、おれはあの子を養子にしたい。だってあの年で帰る家もなくて、あんな汚れ役をやらせられているのは大人として放っておけない。ついでにっ、そういう行き場を失った子供たちを預かる施設も作りたい。これはあくまでおれの勝手な行動であって、魔王様は関係ないけど。だから、あなたはあなたの道を進んでくれて全然かまわない。以上!!」
今度はポカンとしてる。可愛いな、本当に。あなたはとても綺麗なのだから、お風呂上がりの生々しい体で、男の部屋を訪ねてきたりしてはいけないよ? おれは、なんとかこらえているけれど、みんながそうとは限らないんだからさ。
「デルタよ」
「なんです? 魔王様」
「今、なにを言ったのか、まとめて説明して欲しいのだが?」
ああもう、あなたって人はっ。でも、やっぱり情報過多だったか。
「おれは、魔王様しか愛せません。待てと言われたらいくらでも待つし、あなたの仕事に口出ししたりしない。そして、あの子供をおれの養子にする。そういう子供たちを集めて施設を作る。それだけ」
と、言った後、大事なことを思い出した。
「あと。もしかすると、ユウキたちが生きているかもしれないことがわかったんだ」
そう言うと、魔王様の反応も待たずに、コウモリの少年を部屋に招き入れた、
衝撃の真実へ!! つづくのだぁ
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