第49話 正義のための、犠牲
そいつが刃物を持っているのを確認した。おれはすぐに魔王様に飛びつこうとしたが、あと一歩で届かない。
魔王様は、イカリを励ましているため、そんなことには気づかない。
「魔王様っ!!」
おれの叫びで魔王様が振り向く。だが、間に合わないっ!! ダメか!?
「ぐっ!!」
ところが、イカリがとっさに魔王様をかばって刺された。そんなことってある?
影は、刃物を床に落として、呆然としている。それは、さっき逃げたはずのコウモリ族の一人だった
「魔王のせいだ。魔王がだらしないから、人間ごときに城を支配させちまったんだ。そのせいでおれたちは、あんなくだらない男の配下になっていた。仲間もたくさん殺された。それなのに、どうして笑っていられるんだよぅ」
「少し、黙っていてはくれないか?」
威嚇して黙らせると、おれは、他にもコウモリが隠れていないか確認すると、そいつを後ろ手に拘束した。
イカリはだが、体が少しずつ灰になり始めていた。こんな風に別れがくるなんて、思っていなかったのに。
「なぜそなたが我を守った? なぜ、直前でマリーのネックレスを我の首にかけた?」
「だって、さ。その方がいいと思ったんだ。おれ、たくさん迷惑かけたから、だから、あなたを守らなきゃって。それに、魔界には魔王が必要だろう?」
息も絶え絶えなイカリの手を、きつく魔王様が締め付ける。
「魔王、しあわせに――」
「イカリー!!!」
イカリは、灰になってしまった。
ねじれすぎてしまった関係は、最後に解けたのだろうか? もう、わからない。
「まったく。せっかくめでたしめでたしですんでいたのに。なんてことしやがる!!」
おれは大理石の床にコウモリ顔を押し付ける。
「ましてや魔王様に刃物を向けるだなんて、絶対に許さんからなっ!!」
「……デルタよ」
どうした? 魔王様。可愛い顔しちゃって。ダメージを受けた顔すら愛おしい。
「起きてしまったことは、もうしかたがない。せめて、これ以上の犠牲を出さないよう、なにか策はないか?」
策、か。
そうなると、おれはコウモリに目をやった。
「なぁ、コウモリ族の超音波を使って、魔王城は無事に魔王様が征服したと魔界に知れ渡らせる方法はないのか?」
あるのならば、それでチャラにしてやらないこともない。どうよ?
「ある」
コウモリは短く答えた。まったくさぁ、こいつらって本当にとんでもないんだよな。
つづくぅー。
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