第50話 勝利宣言!! 魔王城復活!!!

 とにかく、これ以上おかしなことをしないと誓わせた上で、おれたちはコウモリの言うように、窓を開けてテラスの先までコウモリを連れて行った。


 あれほど降っていた雪は冷えて固まり、朝日が昇り始める。


「皆の者、早朝から騒がしくしてすまない。だが、我の名はジャスティス。かつてこの魔王城の王だった者だ!!」


 力強い魔王様の声が、コウモリの周波数に乗って、広々と伝わって行く。ようやく、ここまで来たんだ。


 おれと同様に目を潤ませた魔王様は、自分の気持ちに飲み込まれないよう、気丈に振る舞う。


「その我が、ふたたびこの魔王城を取り戻した!! 魔族よ、誇り高く、気高い魔族たちよ!! 今こそ手を取り合い、今一度、肥えた大地を蘇らせ、声高らかに笑いあおうではないかっ!!」


 すると、どこからともなく地響きと咆哮が湧き上がってきた。これまでなりを潜めていた魔族たちが、一斉に声を上げてくれたのだ!!


「我はかつて、おろかな決断をした。肥えた大地を傷つけたくない思いだけで、勇者にこの城を明け渡してしまった。もう一度チャンスをくれるのならば、我も共に土を耕し、雨を降らそう!!」


 ドォォォォっと、魔族たちが魔王城の前まで集まっていた。


「人間たちは灰になった。ここは魔界だ。我ら魔族たちのための大地なのだ!!」


 魔族たちが、泣いている。


 ここにいる誰もが、魔王様を責めることなんてできないだろう。


 なぜなら、みんなが勇者たちに頭を下げて、城を取り戻そうと戦うことがなかったのだから。


 たくさんの歓声に両手をあげて答える魔王様のために、久しぶりの朝日が照らす。その白い頬が、涙で濡れていたことを、おれは決して忘れないだろう。


 こうして、魔王様のホーンは無事にすべて回収して、魔王城も奪還できた。


 城の後片付けなんかは、魔族の有志がこぞって手伝ってくれることになった。


 その一味に、コウモリ族がいることも、忘れちゃいけない。


 つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る