第33話 人となりって大事だよな。つまり、情報がなければなにもできないわけだし
人生いろいろ。時々コウキの洞窟を訪ねては、ユウキの愛を感じられないとわめいたというユカリ。おれたちはまだ、ユカリのことをほとんど知らない。
なにしろ最初に白旗を揚げたのは、おれたちの方だったからな。
だけど、そのせいでコウキがユウキを手に入れるために、ユカリをたぶらかす方法を思いつくだなんて、想像すらできなかった。人間がこうもあさましい考えを持つなんて、魔界じゃ誰も知らないからな。
まぁ、下手をすると、おれたちの目には最初からコウキが勇者一行とは知らないままでいた可能性もある。
あまりにも存在感がなさすぎて、見えてなかったってわけだ。
「それで? ユカリってどんな女なの? やっぱり無意味に流されやすいタイプ?」
「デルタ。ミナトの前でそのような言葉は慎みなさい」
あ、そうだった。あっさりとこっちに寝返ったミナトは、おれが乗っていたコウモリの背中にしがみついている。なんなら飛行速度に耐えきれなくて、目を開けたり閉めたり、涙すら流していたりした。
こんなに脆弱な存在なのに、魔族にさからおうだなんて、大それた野望を抱くものだな。
「母さんには、最近会っていないんだ。ぼくもほとんど部屋の中にいろって言われていたし、母さんもきっと同じだと思う」
いんや。坊やが考えもつかないあれやこれやがあるんじゃーないかと思うが。ま、子供の前だし? いちいち口に出しませんから、そんな可愛らしい目で睨まないでくださいよ、魔王様。
「大学生時代のユカリは、男友達が多かったような気がする。公衆の面前で告白されて、断ったところも何度か目にしたこともある。とにかく派手な印象があった。ユウキがなんであんな女に惹かれたのか、おれにはわからない」
だーかーらぁー。おれが言ったんじゃないですってばぁ。睨まないでくださいよ、魔王様。襲っちゃうぞ。
「それで? ユウキはどんな性格なの? やっぱり王様になりたいタイプの人?」
「ゴホン」
やべ。魔王様に咳払いをさせてしまった。けど、ミナトはあんまり気にしていないみたいだ。
「最近のあの人は、威張ってばかりいるから、ぼくは嫌い」
うーん? 魔界に長く居たせいで、性格に影響が出ちゃったりしたかな?
一方でコウキを見ると、ヤバい。こいつの目は未成年に見せてはならない輝きにあふれている。抑えろ。いいか? これからお前の大好きな男に会いに行くわけだが、その子供と一緒なことを決して忘れてはいけない。おれたちは大人なんだからさ。ちゃんと責任持って話そうね?
「ユウキは、子供の頃から王様に憧れていた。いつか、日本の王様になるんだって、目を輝かせていて。それで、世界中の美女をはべらすんだ――」
おーっと、失礼。それ以上はミナトに聞かせるわけにはいかないからな。とりあえず鹿の角を掴んだ次第だ。
もうさ、子供の前だと気を使うよな、あとつづくから。
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