おれたちの魔王城を奪還せよっ!!

第31話 優等生が反抗期になったみたいな

 魔王城に到着するやいなや、いきなりミナトに出迎えられた。飛翔に、おそらくパワー系の攻撃をしかけてくると仮定して、こいつの命が持つのだろうか?


「悪いことは言わん。ミナトや、それ以上魔力を使えば、そなたの命が尽きてしまう」

「ぼくの命はぼくのものじゃないかっ!!」


 あーもー。優等生が突然迎えた反抗期に自分で苦しんでる例のヤツね。せっかく魔王様がお優しく忠告してくれているっていうのに。このすっとこどっこい!!


「なぜマリーを殺した!? あなたのことを信じていたのにっ!!」


 ミナトが手のひらから剣を作り出して魔王様へと斬りかかってくる。コウモリの背から降りた魔王様は、自身の魔力でその攻撃をかわした。


「すまない。あれは、防げたかもしれなかった。だが、我の考えが甘く、彼女を死なせてしまった。何度あやまっても、あやまりきれない。だからこそ、そなただけは助けなければならないのだ」


 あーあ。魔王様も馬鹿正直だからさ。あれは事故だったんだって言えばいいのに、罪を自らおかぶりになる。まぁ、今のミナトにはなにを言おうと、信じてくれないのだろうけどな。


「うるさい、うるさいっ!! あなたなんて、助けなければよかった。そうしたらマリーは死ななくてすんだかもしれないのにっ!!」


 ふっ、と、魔王様の覇気が緩んだ。その隙に、ミナトが魔王様へと間合いを詰める。おい、魔王様は丸腰なんだぞっ!?


 よい、とおれに手を挙げた魔王様は、ミナトの剣を直接受けた。その立派な腹直筋から、魔族である証の紫色の血が流れた。


「そなたの気のすむまで、我をいたぶればよい」


 その、深すぎる魔王様の温情に、さすがのミナトもひるんだ。


「くそっ。どうして否定すらしないんだ!? あなたが本気を出せば、ぼくなんて簡単に殺せるだろう!?」

「だからだよ」


 苦痛に歪む魔王様がお優しく微笑まれる。この笑顔を、守りたい。守れるのか?


「我はそなたを殺したくはない。だから、これ以上魔力を使うことをやめてくれまいか?」


 くそ、くそ、とミナトが泣きわめく。魔王様は戸惑いながらも少年の頭へ手を伸ばし、お優しくなでた。


「マリーはそなたを守るために、そなたの姿に変化したのであろう? だったら、そなたの死を、彼女は望んではいなかったということになる。たとえ自分の命を差し出しても、そなたを守りたかったのだ」

「うっ、わぁー!!!」


 ミナトは魔王様の腕の中で泣いた。あーあ、そのポジション、今だけでも代われないかな?


 さて、お次は誰だ!? つづくのだっ。




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