第30話 悪運の強さは本当に運がいいのだろうか?
「取り乱しているところを悪いが、ミナトから我のホーンのカケラを取り戻せば、おそらく彼は死んでしまうであろう。だからこそ、人間界へ帰らせたいと願っているのだが、そなたの話が本当ならば、ミナトもイカリも、人間界では存在しないということになるのだが?」
え? と、またコウキが取り乱す。
「だが、あるいは……」
魔王様はなにかを思いついたような顔をしていた。でも、うかつに言葉に出したりはしない。うっかり希望を持たせて、相手を絶望させたくないからだ。たとえそれが、鹿を殺し、食した人間であろうとも。
眼前に懐かしい魔王城が見えてくる。いや、今は勇者城ということか? それとも、ミナト城か? 厄介ごとは増える一方で、両想いになった今でも、おれと魔王様はいちゃつく暇もない。もうがっかり。だから、ここはガツンと人間たちをこらしめなくちゃいけなくて。
でも、お優しい魔王様に、果たしてそれができるだろうか?
心の奥に、わずかな嫉妬の炎が燃える。
魔王様は、こんな状態になってなお、ミナトの心配をしている。本当はおれなんかじゃなく、ミナトのことが好きなんじゃないのか?
魔王様はご自分の気持ちに鈍いところがある。だからこそ心配なのだ。
たったわずかな間にたくさんの死に遭遇してきた。もし、目の前でミナトが死んだりしたら、魔王様は二度と立ち直れなくなるんじゃなかろうか?
またご自分を責めて、苦しむのではないだろうか?
おれに、そんな魔王様を救うことができるのだろうか?
答えを考えることはとてもむなしくて。だからこそ、これ以上の被害を出すわけにはいかないんだ。魔王様を守るということは、同時に魔界のみんなを守るということ。それができないのならば、恋人である資格なんてないのだから。
わりとシリアスなまま、つづくのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます