第29話 人柄がすべてだ
「まったく。人間なんて、聖人君子ばかりかと思えばこの野郎!!」
おれはコウキの言動に呆れて、怒りを制御できなくなっていた。
こうなったら、ユウキたち一家もまじえての説教タイムが必要だな。なにしろあいつら、完全に性格が歪んでしまっているのだから。
でも、もしかしたらだけど、魔界に来たせいで性格が歪んでしまったのだとしたら? まぁ、イカリとミナトは置いといて、だ。
「そもそもなんで君たちは魔界に来たのか、それを教えてくれないかい?」
そう、おれたちは最初からきちんと話し合いをするべきだったのだ。その上で降参するなり、戦うなりしておけば、こんなにややこしいことにはなっていなかったはず。
そうするとまず、根本的なところから話し合う必要があるのだ。
「おれの口から言っちゃってもいいのかな?」
お前以外の誰と話せと? まぁ、そうせっついたら話せないか。
「まずはユウキが同級生のユカリに惚れて。おれにも協力してくれ、なんて言い出して」
ほう。この時点でコウキの気持ちはユウキに届いていなかったのか。
「とりあえず、ユカリはゲームが好きだから、新しいゲームイベントに三人で行くことになって。それで、えっと?」
どうした? 記憶がこんがらがっているのか? コウキは急にコウモリの背中で頭を押さえてもんどりうつと、荒い呼吸を繰り返した。無理やり取り込んだ鹿の角も、それにあわせるように踊り狂う。なんというか、足場が悪い上に、暴れられたんじゃ、さすがのどう猛なコウモリ族でも体がもたない。
「もうよい。思い出したくはないのであろう」
「いや、いいんだ」
魔王様のお優しいお言葉に刃向かうように、コウキは正面を向いて呼吸を落ち着けた。そして、衝撃的なことを口にしたのだ。
「ゲーム会場には着いた。でも、突貫工事だったせいか、屋根のパネルが剥がれて、おれたち三人は下敷きになり、そして、気づいたらここにいた。……だからか。だから、おれがこの姿で人間界を徘徊していても誰もなにも言わなかったんだ。言わなかったんじゃない。おれはもう死んでるんだ」
なんだってぇ!? じゃあ、ここで生まれたミナトとイカリはどうなるんだ!?
手っ取り早くつづく!!
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