第28話 子供たちの洗脳は、無事にすべてを解除した
魔王様のおかげで、女の子たちの洗脳をすべて解くことができた。コウモリ族には悪いが、後で君たちの洗脳も解くから、今だけは子供たちを全員無事に家まで送るようにと、魔王様が命ずる。
コウモリ族って、本当はもう洗脳が解けているのではないかい? と、いうくらいあっさりと魔王様に従う。まぁ、我ら魔族が生き残るためには、少しくらい自分に都合のいい側についたりしてもしかたのないことだよな。
と、言うわけで、お子様たちは無事退場。
そうしてようやくコウモリ族の背に乗せてもらい、城へ向かうこと数分。
「あれ? どうして魔王様は鹿男とユウキを会わせようって思ったんですか?」
手持ちぶたさなので、そんな質問を投げかけてみた。魔王様はほんの少しだけ肩をすくめると、ひょっとしたら鹿の角が取れるかもしれないと思ってな、と答えてくれた。
鹿の角。つまりは鹿族という種類の魔族がいる。形そのままに鹿の奴もいれば、一回り小さな奴もいる。暴走すると、かなりやんちゃなのだけれど、彼らはとても可愛らしい。つぶらな瞳がたまらないのだ。人型の奴もいるので、彼らの角が転売目的で切り取られる事件が相次いだ。
そんなわけで、魔王様が編み出した鹿の角対策は、鹿を殺したり、傷つけたり、角を闇で売買する者は極刑にするという法律まで作った。
それなのにこの人間の野郎!! なんて酷いことをしてくれたんだよ。下手をするとお前も極刑だったんだからな。
「残念ながら、魔族の性質を変えることは難しい。だが、人間ならばと、そう思ったのだ。デルタは、我の選択が間違っていると思うか?」
魔王様。とても繊細で、自分の心を限界まで追い詰めてからでないと決断できないお優しい魔王様。今回ばかりは早急な決断が必要だったが、その不安な気持ちをおれなんかで取り除けるのならば、なんだってできる。
「いいえ。人間の性質は、おれたちにはわかりませんもん。だから、自信をお持ちになってくださいよ、ジャスティス」
どさくさの名前呼び。一瞬、花がほころびかけた魔王様がかぶりを振っていましめる。今は、魔王様でいてくれないと困るからだ。
「我をからかうでない、デルタよ」
「ねぇ、あんたたちさぁー。本当に仲良しこよしなんだねぇ?」
おま、誰のせいで微妙な空気になっていると思ってるんだ!? この人間野郎!!
「思い出すなぁ。人間界にいた頃の、おれとユウキは、恋人同士じゃなかったものの、それはそれは仲良しで。一緒に駄菓子屋の婆ちゃんダマして、釣り銭余計にもらったり、むしゃくしゃした時にはピンポンダッシュしたりして遊んでたっけ」
「前言を撤回しよう。デルタ、この者をただちに極刑にするべきだと我は思うのだ」
「おおいに同意です。まったく、ピンポンダッシュとやらはわからんが、婆さんをダマすとはフテェ野郎だっ!!」
コウモリ族の背中に乗っているのも忘れて、最強の体幹を維持してその場で立ち上がり、剣を構えたおれに、コウキの野郎が待て待てと泣きついてくる。
「えっと、その。子供の頃の話だ。な? わかるよな? 魔族だって、やんちゃな時期があっただろう?」
「「ないっ!!」」
こちとら厳しく教育されているんでぃっ!! 魔族はなにかっていうと目の敵にされがちだからな。そんな浮ついた気持ちで育った奴なんていないわ。
複雑な気持ちを抱えたままつづく!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます