第27話 閉まっているならぶち開けろ!!

「魔力が無い、だとう!?」


 この鹿男は一体全体どうしてここまで自分勝手なんだ。そもそも勇者一行からこいつだけ外された時点で大人しく人間界に戻れよ。行き来できるってんならばさ。


 おれの怒声に、鹿男は土下座をする。あーあー、鹿の角がかわいそ。


「そのっ。ちょっと魔力を使いすぎてしまって。なんというか、人間界への穴も閉じてしまった状態で」


 うぉい!! そもそもこいつは人間なんだし、魔力の使い方なんてわかるわけもない。そこに来て、やれ洗脳だなんだと魔力を使い果たしました、で許せるもんじゃない。その鹿の角をきちんと鹿さんにお返ししなさい。って、鹿さん食べちゃったんだっけ? ひっど。お前なんか用が済んだらすーぐに極刑にしてやるんだからなっ。ただしぃ、魔王様の見えないところでな。


「すまないが、その穴の元へ我らを案内してはくれまいか?」

「魔王様、なにか策がおありなんですか?」

「この者に魔力がなくなったのならば、我の魔力を使ってみようかと思ってな。穴が開通すれば、ユウキたち共々、人間界へ帰してやれるのではないかと思ってな」


 おっ、やっさしーぃ!! さっすがはおれの恋人。なんてゆうの、優しさのレベルが段違いすぎてもう天使なんじゃないのかと疑うレベルだぜ。天使は敵だけどな。


「だが、ユウキの子供たちは? おれ、ユウキを丸め込もうとして、コウモリ族の女に魔法をかけて、ユウキを誘惑するよう命令したんだ。そうすれば、やたらプライドの高いと噂されるイカリがユウキをやっつけてくれると思って」

「なーるほど。イカリをけしかけたのまでがお前の仕業かっ!!」


 おれは鹿男の角が外れそうなほど力強く、奴の頭をこぶしでグリグリしてやったぜ。


「そなたのおかげで、おそらくはミナトの方がそれを実行しようとするかもしれない。イカリのホーンはすべて回収したつもりだからな。だが、城に戻れば、まだ我のホーンのカケラが残っているという。これは人間界への開通は後日行うことにして、今は城に戻った方がよさそうだな」


 さっすが、魔王様は冴えてるぜ。けど、本当に魔王様はそれでいいの? ひょっとしてミナトに淡い恋心とか抱いていたりしてない?


「デルタ。我はそなたを裏切るようなことはしない。絶対にだ。それに、長らく温めてきたこの想いに、嘘偽りはない」

「ジャスティス……」


 おもわず口づけをしそうになって自分の頬を叩いた。いちゃつくのは、すべてが解決してからのお楽しみだっ。


「鹿男。そなたも一緒に来るがよい」

「へ? でもおれ、もう魔法が使えないんですよ?」

「それでもだ。そなたのユウキへの想いはゆがんではいるが本物のようだ。よって、彼を懐柔できるやもしれんからな」


 そのくらいの役にはたってくれなきゃ嘘になる。


 けど、その前に。鹿男のことはどうも信用ならんので、魔王様と手分けをして洞窟の隅々を見回ってみたが、やはり、どこにも穴は無かったのだった。


 こうしておれたちは、コウモリ族を従えて、城へ向かうのだった。


 当然つづく!

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