第25話 洞窟の中はなにかの臭いが鼻をつく
「鹿男くん。そなたはどうやってここから出ようと考えているのだい?」
あーあ。魔王様が地雷を踏んでしまったような気がする。そりゃーね。そうなりますよ。ちなみに、鹿男くんって、なんかツボる。
「見事なホーンをつけているからといって、哀れむのはよしてくれ。おれはなぁ、機を見てユウキをこの洞窟に誘い込むつもりでいたのだ。それなのに、コウモリたちは見当違いなものを連れ込んできやがって」
キーキーと、哀れにコウモリたちが鳴く。いや、もう、この洞窟さ、大小さまざまなコウモリがいるのよ。もう臭いがさぁ。
「ふむ? これは、人間界の香りであろうか?」
「へ? この臭いって、アレじゃないの?」
お食事中の方への配慮として、アレと明記したが、まぁわかってくれるよな?
「そうだ!! これが人間界の芳香剤の力よっ!!」
うん? 人間界の芳香剤? そんなものを喚起の悪い洞窟内で使うから、鼻をつまみたくなるような臭いが充満してるわけか。なるほど、なるほど。
「鹿男くん。もしやそなたは、人間界への行き来ができるのか?」
「うん。人間界って言っても、最近は変わったコスプレの人もいるから、人目なんて気にならないさ」
そこじゃないっ!!
「どうやって人間界に行き来してるのさ!?」
おれが前のめりで聞いたせいかもしれない。コウキ、いやあえてここは鹿男と言おう。鹿男が頰を赤らめた。
「教えてやらないこともないけどさ、あんた、いい男だよな」
「それは知ってるんだよ。どうやって人間界に行き来してるのかって聞いてるんだけど!?」
っておい!! なぜおれの手を握る!?
「いやー、おれもさぁ、日差しを浴びると死んじゃう体になったわけだし、さみしいしさぁ」
「コウキ様ぁ〜。そろそろ戻っていただけませんかぁ〜? ぼくたち、困りますぅ〜」
色男すぎてもろもろピーンチなおれの前に、とんでもない美少女たちが現れた。しかもなぜかぼくっ娘。
「彼女たちは? もしかして、さらわれた美少女たちは、みんなこの中に?」
そうだった。こいつはあのうす汚いユウキの愛人であり、知り合いで、コウモリ族をたぶらかせて人さらいの常習犯なんだった!!
「い、いやぁー。なんのことかなぁ?」
「とぼけるんじゃねぇ、このすっとこどっこい!!」
すっとこどっこいってなによ? なんでそんな言葉がおれの口から出てくるんだよ。まったく。鹿男と居るとペースが乱される。
「いいからさっさとどうやって人間界に行き来しているのか白状しやがれっ!!」
「デルタ。そなたはまさか、その鹿男を愛しているのではないのか?」
「魔王様、テンポが少しズレてますっ!! あとそれは、はてしなく誤解ですから」
真実やいかにぃー!? つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます