第21話 薄情

 なんてったって、腐っても元魔王様とその直属の部下であるこのおれだ。いっくらコウモリが嫌な超音波を出そうとも、ちぃーっとも聞かねぇ――? 魔王様がうずくまっていらっしゃる。やはり、この超音波が頭痛を誘発したのか!? おのれぇ、コウモリめっ。


 おれは魔王様から頂いたありがたーい短刀を魔法で長く伸ばすと、コウモリたちをバッタバッタと切り倒した。だが、相手はコウモリ。すばしっこさと数にものをいわせて減りやしねぇ。


「くっそぅ。アレを使うか」


 魔法を使うと、その後すっごい脱力感があるから嫌なんだけど、そうも言ってられないしな。


「心卑しい者たちよ。我の前にひれ伏せ!! ダークネス・クロウ!! 滅殺」


 シャキーン!! 決まったぜ。これにより、コウモリの数はだいぶ間引かれた。どうするよ? みんなヤっちゃう? おれ、まだイケるけど?


「デルタよ」


 お? 魔王様、復活?


「コウモリにも、優しくしておやりなさい」


 ……。あなた今、殺されそうだったのですが。おれが今、あなたのことを救ったつもりでいたのデスガ!!


 ですが、そうね。ニセモノのユウキを探さなくちゃいけないものね。なるべく早くにねっ。


 って、コトなので、キミたち命拾いシタネ?


「ま、待ってくれっ。ユウキ様は本当にいるんだ。だから、だからおれだけは殺さないでくれぇー」


 あーあ。コウモリ族の親分つっても、ちぃーせぇー男だな。自分一人だけ生き延びてどうするよ? それに気づいた他のコウモリたちが、アホなりに目を見合わせている。この親分、焼きが回ったな。


「いーよー? ただし、お前さんが言うところの本物のユウキとやらのところまで案内してくれたら、な?」

「はいっ!! それはもうっ!! っ!? ぐはぁっ」


 一瞬、なにが起きたのか理解できなかった。自分たちを見捨てたと思ったらしいコウモリ族が、親分を後ろから切り捨てたのだ。


「お前らっ。なにしてんだよっ。こいつに導かれて、ここまで来れたんじゃないのかっ!?」


 おれの怒号に動じるようなコウモリではない。なにしろ本当に元々卑しい族だからな。そりゃ平気で仲間を裏切れるわけだ。


「ですが、この者は我らを裏切ったも同然。そんな者が、魔王様たちをも裏切らないとも限らないではありませんか」


 ま、そういやそうだけどもさ。薄情な連中。おれは生き絶える元親分をなるべく見ないようにした。まったく、最近死人が出すぎなんだよ。


 生臭〜い中でも、つづくのだ。

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