第20話 コウモリ族の親分
どうやらすっかり自分を取り戻すことができたらしい魔王様は、えらく凛々しいお顔でコウモリ族の親分と思われる男に声をかけた。
「我らは今、急ぎ向かわなければならない場所があるのだが。とりあえず、何用かを聞いてやらんこともない」
「へっへーん。話がわかるじゃねぇか。おめぇら今、すんげぇうまそうなモン食ってたじゃん。アレなに? おれたちにくれない?」
魔王様は一度おれと目を合わせた後、ファイティングポーズを取る。
「これは、無事に城を取り戻した暁に、マリーの墓前にあげるためのもの。したがってそなたらには渡さんっ」
「へん。だったら奪うまでのこと。にーちゃん、とってもキレイだしぃ? 売ったらすげぇ稼げそうだから」
「あーっ、たくもぅ。しつこい連中だなぁ。こちらにおわすお方はなぁ、魔界を統べる魔王様なんだぞぅ!!」
ババーンと絵文字付きで訴えたおれの言葉にうろたえるコウモリ族の一部。
「だったらなんだよ!? ああーん? おれにはなぁ、ユウキ様からいただいた、ホーンのカケラが埋め込まれているんだぞう!!」
偉そうに言い返したコウモリ族の親分に、言葉をなくす魔王様。ん? どうしたん? 可愛い顔しちゃって。
「ふん。そのカケラは我のものではない。すなわち、偽物ということになる。するとそなたが、この界隈の薬師や娘をさらったという張本人かっ!?」
魔王様は賢い。そして、自分のホーンか、他人のホーンかの区別くらい、魔族だったら誰でもわかる。他でもないご本人がそうおっしゃるというのならば、そのカケラは偽物なのであろう。そして、宿屋の主人たちを悲しませてきた元凶はこいつらだったのかっ!?
「えっ!? でも、えらく効果のあるホーンのカケラで、おれはたしかにユウキ様からご命令をいただき、願いを叶えただけのこと」
「残念だが、そのユウキも偽物である可能性があるな。そなた、どこでユウキと出会った? 正直に白状すれば、命までは取るまい」
だが、残念ながらコウモリ族が魔王様の言うことを素直に聞くことはなかった。元々好戦的な彼らは、突然おれたちに攻撃をしかけてきたのだ。
「あっははーっ!! どっちにしろ、元魔王を倒せばおれ様の株はまた上がる。おめぇら、やっつけちまえっ」
ああもう、コウモリの出す超音波で集中できない。しかもこと超音波、もしかしたら魔王様の頭痛を誘発するんじゃないのかっ!?
ハラハラしながらも、つづくぅ。
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