第17話 過去を語る その二
それからおれは、自宅から釣竿を二つぶら下げて、しばらくジャスティスと釣りを楽しんだ。
そうしているうちに、なんだか本気でジャスティスに惚れてしまっている自分にも気がついた。
彼を、飢えから救ってあげたい。でも、大地は干ばつしていて、とても田畑にはならない。
せいぜい動物を狩ったり、魚釣りをするくらいしか食料はない。
けど、時々こうしてお菓子を差し出してあげれば、いつだってキラキラした瞳で喜んでくれるピュアさに心が救われる。
「ジャスティスはなんで魔王になりたいんだい?」
学校に行きたい、とか、女の子にモテたい、とか、そういった身近な幸せを求めないのはなぜだろう?
今の魔王は世襲制度でだんだんと質が悪くなっている。大人たちはそう言っていたけれど、おれは政治には興味がないし、おれが世界を救えるなんてことも考えたこともない。
それなのにジャスティスは、そのキラキラと輝く瞳でそんな簡単なこと、とばかりに言い放つのだ。
「ぼくが貧しいのは、大地が肥えていないからだ。だから、今の王様を倒して農地改革を起こして、肥えた大地に変えてみせるんだ。そうしたらもう誰も、ひもじい思いをしなくてすむじゃないか」
ああ、ジャスティスは何度もおれを虜にする。そうしてお前以上に心の綺麗な奴には金輪際出会わないだろうと言う絶望を味わわせてもくれる。
おれはその時、その瞬間、ジャスティスの前に跪いたね。
「おれが、必ずあなたを魔王にしてみせる。言葉遣いや礼儀作法はおれが教える。危険になったらおれがあなたを命がけで守る。だから、おれを一番の部下にしてくれないだろうか」
ジャスティスはなんの疑いも持たずにおれの手を取り、立ち上がらせた。
「命はかけなくていい。でも、いつも側にいてくれるとうれしいし、とても助かる。デルタはぼくの、一番の親友だ」
あの時の笑顔。そして、シロちゃんとの出会いとそれから後のおれたちの快進撃。なんたって、魔王を倒したのはおれたちなんだからな。
おれは、決して忘れない。どんな時もあきらめないジャスティスを愛しているから。
つづく
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