第7話 噂のツインルーム

 人間界にはツインテールなんてものがあるらしい。なんでも髪の長い者が耳の上あたりで二つに髪を結うのだとか。その話を投獄中に本で読んだ瞬間、おれの妄想は広がりまくったね。


 だって魔王様、長くて綺麗な黒髪だもの。ツインテールだって絶対に似合うはずさ。


 なんで突然こんなにいきり立っているのかって?


 そりゃあ、だってさぁ。


「では、お二方はこちらにどうぞ」


 なんて宿主に案内された部屋の中でおれと魔王様の二人っきり。


「へ? 爺さんは?」


 思わず焦って聞いてしまうほど、ヤバイ部屋だった。


「わたしはいつもの部屋におるわい。用がある時は内線通話してくれ」


 そう告げて、さっさと立ち退かれてしまった。


「ジ、ジャスティス? どうします? ま、まずはシャワーから」


 ボフッと音がして、魔王様の重みが消えた。代わりに、無防備な姿でベッドで横になる魔王様の姿が見られる。


 ふー。理性が引きちぎられるかと思った。危ない、危ない。


 一応、念のために部屋の鍵をかけてから、窓などになんの仕掛けもないことを注意深く確認すると、防御魔法と結界をしかけておいた。おれにだって、それくらいの魔力はあるさ。


 さて、問題は魔王様なんだよな。


 ツインルームって、ベッドが二つある。だから、それぞれのやつを使えばいいのだけれども、さすがにおれまで熟睡するわけにはいかないよな。あの化け狸も宿主も信用できるかまだわからないし。魔王様は弱ってるし。


 なので、厳重に警戒した上で、とりあえずシャワーだけは浴びることにした。いやぁー、冷たい水が気持ちいいー!! 本当は大浴場に行きたかったけどさ、さすがに魔王様をこの状態で置いていけないでしょうよ。


 体の中に染み付いた、十六年分の垢を落としながら、おれは先のことを考えた。


 魔王様の頭痛はきっと、ホーンを全部回収しなければ治らないだろう。だからやっぱり、どんな手を使ってでもホーンはすべて回収しなければならない。


 その場合、イカリはともかく、ミナトはどうなるのだろう? せっかく治っていた高熱が出て、下手をしたら死んでしまうかもしれない。


 ミナトは、自分の部が悪くなることを予測して、おれたちを助け出そうとしてくれた。ホーンのお礼だと言われても、おれたちも彼に恩を受けた。目の前で死なれたんじゃ気分が悪い。


 けど、じゃあどうする?


 もし、彼らがなにごともなかったように人間界に戻れたとしたら? 人間界には、優秀な医療があると聞く。そこでならミナトも助かるんじゃないのか?


 でも、どうやって人間界に戻せばいいんだ? その場合、記憶は? ユウキだって、これまでのような振る舞いは許されないだろう。


 あー、ややこしくなってきたっ!!


 でも、つづくんだぜ。

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