第2話 お地蔵様の言い分
「わたしは長いことお地蔵様の魔族としてここに居座ってきたのです。時に壊され、時に修復されながら、よく頑張ったと思う。もう一度石像に戻れと言うのなら、せめて、せめて殺してはくれないか?」
無理!! 無理だからぁっ!! そういう目でおれを見つめないでくださいよ、魔王様ぁーっ!! あー、このお地蔵様、タチが悪いぞ。まさかの情に訴える作戦できた。
「デルタよ、この場は見なかったことにできまいか?」
「できませんよっ。だってジャスティス、ホーンを折ってから偏頭痛がするんでしょう!? ほんのわずかなカケラでも、回収した方がいいに決まっているじゃないですかっ!!」
「…………デルタ」
「ですから、そんな目で見ても、おれにはホーンを回収する能力はありませんし、こここれに限って言えば、ジャスティスがご自身のお手を汚すしかないじゃあーありませんか」
あー、もー。そんな色っぽい目でおれを見ないでくださいってばぁ。
「おぬし、偏頭痛をお持ちか?」
おもむろに尋ねてくるお地蔵様。
「ああ。右側のホーンを折ってから、偏頭痛が起こるようになってしまったのだ」
「では、その偏頭痛さえ治れば、わたしはこのままでもよいということになるのだなっ!?」
「できるのか!? そのようなことがっ!?」
身を乗り出す魔王様。不意にその魔王様に抱きつく不届き地蔵!!
「隙あり!!」
じゃねぇよっ!! とっさのことで、油断していた魔王様は、地蔵の野郎にのしかかられて、その重みに耐えきれず、尻餅をついてしまう。
「おまっ!? なにしてくれるんだよっ!!」
魔王様を最初に押し倒すのはおれなんだからなっ!! って、趣旨が違った。
「わたしをこのまま自由にさせてくれなければ、どかないぞ」
あーもうっ!! なんていやらしい目で魔王様に抱きついているんだ、このクソ地蔵がっ!!
「なんだか、ちょっとばかりクマの臭いがするが、とーっても暖かくていい香りがするわい」
「わいじゃねぇっ!! 離れろっ!! おれのジャスティスにそれ以上くっつくなっ!!」
「ほぉーう?」
地蔵は顔だけを器用におれの方に向けて、いやらしい目で笑う。
「ちっ、違うからっ。そんなんじゃないからっ」
「ではなんとする? わたしはこのままでも一向に構わないぞ。なにしろこんな美形、金輪際出会える可能性はないのだからなっ」
おおーい、ちょっと待てぇー!! 頼むから、魔王様の胸をスリスリするなっ!! ああもう、その場所取り替えたいーっ!! まだおれだってそんな至近距離になったことがないって言うのにっ。
とりあえず、頭を冷やしてつづくのだ。
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