第4話 毒ヘビだって、なんのその
まぁね、魔王様が一緒なんだから、わざわざ山道を歩かなくても、簡単に街までワープできるんだけどね。
それでも、魔王様は、荒廃した森の中を歩きたがったのよ。だって、どのくらい酷い状態なのかを、ご自分の目で確かめたいとまで言われちゃったらさぁ。
そこはもう、おれにとっては単なる森林デートなわけよ。
〔おれの妄想スタート〕
『すまんな、デルタ。ほんのわずかな間でも、そなたとこうして二人で歩いてみたかったのだ』
『構いやしませんよ、ジャスティス。ほら、木から毒ヘビが。おれがしとめて、魔王様にヘビ柄のなにかを作ってさしあげますから』
『おお、デルタよ。そなたこそ、我の腹心の友。いや、恋人と呼んだ方がよかろうか?』
『ジャスティス、愛してます。ずっと、ずっと昔からあなただけをっ!!』
『デルタ……』
よよと寄りかかる魔王様をあらん限りの力で抱きしめてみせよう!!
おっと。本当に毒ヘビと遭遇しちまった。
〔おれの妄想終了〕
「ジャスティス、そこを動かないで。毒ヘビが――」
「おお、ちょうどよいではないか。このヘビにもホーンが埋め込まれていた。ホーン回収」
そして少しずつ、魔王様の右側のホーンが半分くらいまで戻ってきた。
毒ヘビは、生きたまま魔王様が首に巻いてご満悦だ。こいつの毒は血清として売れば金になるし、なにしろ無敵のヘビ柄だ。好きな魔族はとことん好きな奴だ。
「これは財布などに加工できないかの?」
「どうですかねぇ?」
割と小さいヘビだから、使える部分は限られているかもしれない。でも、好きな魔族はとことん好きなやつだから。
「これならば、ベルトなどに加工できるであろうか?」
「うーん? まぁ、ベルトくらいだったらできそうですね」
しかし、と魔王様がどこを見ても枯れている森林を眺めやる。
「あれほど肥えていた大地が、このように様変わりするとはな。先ほどのクマも、やせ細っておったし」
そう言って、魔王様自らが浄化魔法をかけたクマの毛皮を羽織り直す。いいっ!! 頭だけ残してあるから、見た目はクマに食われそうに見えなくもないけど、クマの毛皮もとびきり似合っていらっしゃる!!
「いっそ、この毛皮をそのままマントの代わりにジャスティスが使った方が良くないですか?」
「いいや。クマの毛皮頭付きで羽織っておったら、無駄に注目を浴びることになるやもしれん」
そっかぁ。多分おれたち、現在指名手配中だろうからな。
それに、魔王様はおれだけのもの。他の野郎にジロジロ見られたくはない。
「承知しました。じゃ、まずは資金繰りからですかね」
こうしておれたちは、街まで降りて行くことにした。この後起こることなんて知りもせずに。
つづきがあるっていいもんだよな。
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