第3話 ジャッジャーン!! やる時はやる男なのよ
「で、どぇーい!! かかってこーいっ!!」
おれが拾い上げたのは、今にも折れてしまいそうな貧弱な枯れ枝。だが、こいつにおれの魔力を喰わせてやるとぉーっ!!
「ジャジーャン!! なんちゃって魔剣ー!」
「ふはっ」
あ、魔王様が笑ってくれた。やったねぇー!! この十六年、魔王様の笑ったお顔を見られなかったおれにとっては、魔力百倍!! やったろうやないのぉー!!
「ガァー!」
「とうっ!」
勝負は一瞬で片がついた。ま、あっさりおれが勝っちゃったんじゃ、つまんないっしょ? でも、勝っちゃったもんね。ちゃーんと、毛皮が傷つかないように、心の臓をヒトツキしたぜい。そこに魔力を流し込めば、クマといえども電撃ショックだぁー!
「ガハッ」
クマはわざわざおれのふところに倒れこんできた。魔王様に捧げる大切な毛皮だ。汚したくないからちゃんと受け止めたけどな。
「魔王様、見ていてくれましたか? これで食事ができますね。まずは、ナイフの代わりになる物を探さないと――」
「ホーン回収。ナイフ。毛皮を剥ぐ。肉だな」
おもむろにクマの皮を剥いだ魔王様は、遠慮なく肉の塊をぶつ切りにして、食べ始めてしまった。
そうだった。魔王様、空腹が極限までつづくとこういう人になるのだった。
「ちょっと、ジャスティスー!! まだ焼いてないじゃないっすかぁ。生肉は体によくないんですよぉ?」
「ちょうどよい火の通りだ」
「いや、電極は通したけど、火は通してませんから」
「虫くらい、我の腹の中で栄養になってくれようぞ」
ああ、ヤバイ。これは予定を繰り上げて、早々と街に行った方がいいかもな。って言っても、街がまだ存在しているのかもわからないんだけどな。
「デルタよ、毛皮をすべて剥いでおいた。そなたも食え」
「ああ、おれが倒したクマを魔王様直々に切りさばいてもらえる日が来るなんて。おれはなんて幸せ者なんだろうっ!!」
「食わんのか?」
「食います、食いますぅー!! 虫くらい、おれの腹の中で栄養になりますからねっ」
そうしておれたちは、ほぼほぼクマ一頭を腹の中におさめてしまったのである。念のため、肉の一部は魔王様の魔力で燻製にしてもらい、おれが持つことにはなったが、浄化魔法を使ってもクマ臭さは消せなかった。
満腹だと眠くなるが、つづいてやるぜぃ。
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