ホーンのカケラを集める旅に出ることになった
第1話 おっと、坊主があらわれた
荒廃した森を前に、慟哭する魔王様を前にしておれは、なにも言うことができなかった。
あなたがとても大切にしていた自然が、こんな形で侮辱されてしまうなんて。
「……デルタ」
「はい、魔王様」
「今より我を魔王と呼ばずに、ジャスティスと呼んでくれたまえ」
「なぜです?」
「おそらく我は、お尋ね者になる。その時、魔王の肩書きがあったのでは、枷となろう。それに我は、昔に戻りたい。なにも知らなかった子供の頃に」
うほっ。って、喜んでいる場合じゃない。そうおっしゃるのならば。
「で、では。ジャスティス様」
「様はつけなくてよい」
つけなくてよい、の発音が、煩悩を刺激してしまうっ!! いかーん!! 一応レイティングをつけているとはいえ、この作品は健全なボーイズラブなのだ。なにしろ平日の真昼間に公開されるんだからな。下手なことをしたら、うっかり作者が消されかねない。知らんけど。
いや、しかしちょっと待てよ? そんなこと言ったら、ここまでラブの要素は全部おれの妄想だけで補完してしまうことになる。それはそれでマズイだろう? だって、ラブだしさぁ。
魔王様と一線を越えるのならば、今しかない!!
「ジャスティス、おれ――」
「来るっ!!」
魔王様はおれの体を後ろに引っぺがした。眼前にあらわれたのは、あの坊主じゃねぇの。しかも人相の悪さから多分、イカリの方。
「はん。さっすが元魔王、直感だけはあるようだな」
「そなた、その能力をどこで手に入れた?」
え? 能力? そういや、こいつ、突然あらわれたな。
「兄様のおさがりは嫌だったが、ないよりマシってことで、煎じて飲んだ」
とことんたちの悪いお子ちゃまだな、おい。
「それより、なぜ十六年もの間、城から抜け出さなかった? お前のその力。あの牢獄なんて簡単に脱獄できたんだろう?」
おお、そういえば。でも、お優しい魔王様は、みんなのことを思ってだな、いや、そういう情緒はわからないか。
「ああ。あの牢獄は我が設計したものだからな。勇者と戦になれば、民が傷つき、せっかく耕した大地が荒廃してしまう。我はそれを恐れて投獄されていたというのに。この十六年、無駄だったようだな。残念だ」
「へぇ? 荒廃した大地の方が、魔族たちは喜んでるようだけど? お前は違うのか?」
「我は、肥えた大地を愛していた。それなのに、こんなっ!!」
魔王様が両手を振りかざす。だがイカリはスレスレのところでかわした。魔王様の攻撃をかわした、だとぉ!? とは言え、イカリは顔をしかめる。まだホーンの動きに慣れてないのか?
「この体。まだホーンの制御に時間がかかりそうだ。また今度相手をしてやるから、今はそいつに相手にしてもらいなよ」
そう言うと、イカリは洞窟の中にホーンのカケラと思わしきものを放り投げ、そして消えた。
「あやつ。なぜここがわかった? まさか――!?」
「ジャスティス、今はミナトの心配をしている場合じゃなさそうっすよ」
おれは、暗い洞窟の中から響きをあげる低いうなり声に耳をすませた。
あらわれたのは――。
つづきがなけりゃあわからないよな。つまり、つづくんだ。
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