第99話 休憩

その後、結局三回ほどウォータースライダーをして……。


ひとまず、近くのベンチで休憩する。


「あぁ〜楽しかった!」


「お、おう、そうだな」


もちろん、俺も楽しかったが……色々と大変だった。

今度は葉月が前に乗ったりして……うなじとか綺麗だったし。

ところどころが、身体に触れたりして……。

まあ、色々な意味で……とても素晴らしい感触だったので、よしとしよう。

というか、俺がこんな体験ができるとは……人生ってわからないなぁ。


「どうしたの? 疲れた?」


「いや、そんなことない。とりあえず、ありがとな」


「へっ? ど、どういう意味? あれかな? ……む、胸が当たったこと?」


「いや、違うし! いや、違わない……そうじゃなくて……というか、顔が真っ赤だぞ。恥ずかしいなら、言わなきゃ良いのに」


いや、可愛いんだけどね。

ギャップというか、なんというか……うん、良い。


「し、仕方ないじゃん! そんなことしたことないもん!」


「……へっ? ないのか?」


「な、ないし……前も言ったじゃん。あんまり、気を持たせることはしないって。相手に失礼だし、勘違いさせちゃ可哀想だし」


そういや、そんなこと言ってたな。

ほんと、見た目と違うというか……そっか、そっか。


「……うん? 俺は良いのか?」


「き、君は勘違いしないでしょ? これは、ラブコメイベントの一環だし」


「ああ……そうだったな」


だめだ……楽しすぎて、ふとした時に忘れそうになる。

これが、ただのラブコメイベントだってことに。

……そうだよな、そうじゃなきゃ……俺なんかと一緒にプール行かないわな。


「わ、私、喉乾いたから飲み物買ってくる!」


「いや、俺もいくよ」


「いや、でも……ほら、ここで私が絡まれてラブコメイベント発生とかあるかもだし」


「そんなイベントはいらん」


「……へっ? ど、どういう意味?」


「だって、それって葉月が嫌な目に合うってことじゃんか。それに何かあったら危ないし、絡まれないに越したことはない。さっきのお兄さんみたいなイレギュラーは別として」


あの時だって焦った。

もし俺がどうにもならなくて、葉月に何かあったらって。

もちろん、周りに人はいたから平気だとは思うけど……。

葉月が危険な目にあうのは嫌だ。


「……もう! なんなのよぉ〜!」


「ちょっ!? なんで背中を叩く!? ダイレクトだから痛いし!」


「う、うるさいし! 野崎君が悪いし!」


「そ、そうなのか?」


「そうよ、間違いないわ。ほんと、急にカッコいいこと言うんだから……これじゃ、私がラブコメイベントを仕掛けられてるみたいじゃん」


「あのー? 声が小さくて聞こえないんだけど……」


「聞こえてなくて良いし! ほら、じゃあ……一緒にジュース買いに行こ?」


そう言い、ご機嫌な様子で葉月が歩き出す。


その後ろ姿は綺麗で、ポニーテールがゆらゆらと揺れている。


俺は見惚れそうになるのを我慢して、あとを追うのだった。


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