第98話 ウォータースライダー

……落ち着け、俺。


これはおっぱいではない、おっぱいではない。


……ムリィィィ!!


は、早くウォータースライダーに行かなくては!


「ちょ、ちょっと? プールサイドは歩くって教わらなかった?」


「うっ……いや、しかし……」


「ふふ、こんなんで動揺しちゃうんだ?」


そう言い、綺麗なウインクをしてくる。

……可愛いんだよォォ!!!

だめだ、テンションがおかしい。


「し、してないし」


「ふーん、そうなんだ? ……えいっ!」


……グォォォ!? より強く押し付けられた!?

一体、どういう状況だ!?


「な、なんで、ここまでする? これも、ラブコメイベントか?」


「へっ? ……そ、そうだけど? というか、野崎君があまりにも女の子慣れしてないから……わ、私が耐性をつけてあげないとかなって。そうしないと、ラブコメイベントどころじゃないし」


「……一理あるな」


いつまでもドギマギしていたんじゃ、ラブコメイベントどころじゃないよな。

よ、よし! 少しずつ慣れて……無理じゃね?

これに慣れるとか……リア充恐るべし。





その後、何とか耐え抜き、ウォータースライダーに到着する。


ここのウォータースライダーは二種類ある。


片方が一人用で、もう片方が二人用のレーンがある。


「どっちにする? まだお昼時だから空いてるけど」


「うーん、私的には二人のやつかな」


「お、おう」


「ほら! レッツゴー!」


「わ、わかったから!」


プールに来てから、何やら積極的な気がする……気のせいか?


順番を待っていると、すぐに番がやってくる。


「彼氏さんが前ですかー? 彼女さんが前にしますかー?」


「い、いや、俺たちは……」


「バ、バカ……! そういうのじゃなくて、ただの定型文だし」


「そ、そっか」


……ど、どうする?

前だと後ろから抱きつかれる……無理無理!

後ろだと……変なところを触ってしまう可能性がある。

うん、そっちの方が危険だ。


「俺が前でいいか?」


「へっ? う、うん……」


「……なんで恥ずかしがってる?」


さっきまで胸を押し付けて平然としてたのに。


「う、うるさいし! 早く乗って!」


「わ、わかったよ」


後ろに人も待っているので、ささっとボートの上に乗る。


「では、彼女さんもどうぞー。しっかりと彼氏さんに捕まってくださいねー?」


「……よし!」


次の瞬間——背中に電気が走る!

後ろを振りかえると、葉月が俺の腰に手を回して抱きついていた。

……なんだこれは? 柔らかくて気持ちよくて……やばい。

とにかく、背中が幸せだと叫んでる。


「な、なっ……」


「ほ、ほら! しっかり前見て!」


「いきますよー……それ!」


そして、ボートがトンネルの中に押し出される!


「うぉぉ!? はやっ!」


「あははっ! たのしー!」


トンネル内をボートが物凄い勢いで滑っていく!


「おい! カーブくるぞ!」


「うんっ!」


さらに強く、背中にしがみつかれる!


「オォォォ!」


「キャァァァ!」


ぐわんぐわんと、ボートが揺れながら曲がっていく!


そして、直線に戻り……着水する!


「あははっ! すごかったねっ!」


「お、おう」


色々な意味ですごかった……背中でグニュンってなってた。

あれをじかに触ったら、どうなるのだろうか?


「どしたの? 早く降りよ?」


「ま、待ってくれ」


俺は何とか制御をしつつ、ゆっくりとボートから降りるのだった。


……若干、前かがみになりながら。

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