第97話 遊園地その九~ヒロイン視点~

 ……ちょっと、予想外の展開だったけど、これはこれでアリかも。


 野崎君の腕を組みながら、そんなことを思う。


 服装も髪型も褒めてもらえたし、水着姿も褒めてくれたし。


 というか、野崎君が意外と面倒見が良いことにびっくりしたし。


 きちんと恵梨香や拓也のことを考えてくれてたし、色々と調べてきてくれてた。


 そのことが、物凄く嬉しかった。


 これなら、変な計画を立てなくても良かったかなぁとか思ったり……。


 でも、私が二人きりになりたかったから……少しくらい良いよね?


 ◇


 プールに行くことが決まった日の夜、私は桜に電話をした。


「あっ、決まったんだ〜。じゃあ、気合い入れないとね」


「う、うん、頑張る」


「……可愛いな、おい」


「はい? どういうこと?」


「ううん、なんでもない。それで、どういう感じ?」


「えっと、予定通りに二人を連れて、まずは遊園地に行くかな。その施設の中にあるプールにも入るって感じ。最近、リニューアルしたところだよ」


 言い方はあれだけど、野崎君にしては良いチョイスかなって思った。

 もしかしたら、色々と考えてくれたのかも。


「ああ〜あそこね。うん、あそこなら年齢関係なく楽しめそう。そっかそっか……ふーん」


「どうかした?」


「いや、二人っきりにはなれないなぁって思って」


「ま、まあね」


 そこだけは、少し気になっていた。

 その……私だって、二人きりにはなりたいし。


「ちょっとまっててね。お兄ちゃん! 明日暇ー!?」


「さ、桜?」


 そこから声が聞こえなくなり、五分ほど待っていると……。


「ただいまー、とりあえずオッケー出たよ」


「なんのこと?」


「私が二人の面倒をみるから、プールだけは二人で遊んだら?」


「へっ?」


「私が一人で行くと行ったら、お兄ちゃんが付いてくるってさー」


「さ、桜?」


「そしたら、少しはイチャイチャできるんじゃないの?」


「ま、まって!」


「はい、決まりー」



 ◇


 という感じで、あれよあれよと決まったっけ。


 ただ、予想外だったのは拓也だし。


 まさか、トイレに行くから遅れるとか。


 恵梨香は早く遊びたいって言うから桜に預けて……。


 男避け用に桜のお兄さんと待ってたら、まさか野崎君に勘違いされるなんてね。


 でも、お陰でかっこいいところを見れたし。


 不覚にもドキッとしちゃった。


「ふふ……」


「な、なんだ?」


「ううん、なんでもないし」


 少しだけ強く、胸を押し付けてみる。


 すると、野崎君がわかりやすく動揺する。


 それが、少し楽しい。


 確かに恥ずかしいけど……それ以上に胸の奥がジンとなる気がする。


 初めての感覚だから、上手く言葉にできないけど……。


 多分、好きってこういうことを言うのかなって。

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