第96話 遊園地 その八
……オォォォ!
ウォォォ!
「うぉぉぉ!!」
「うるさいし!」
「イタっ!?」
思いきり泳いでいたら、いきなり背中を叩かれた。
「な、何すんだよ!?」
「何すんだよはこっちのセリフだし! さっきから何往復してるのよ!」
「えっと……五往復くらい?」
プールに入った瞬間に、煩悩を振り払うためにめちゃくちゃ泳いだ。
そうしないと、どうにかなりそうだったし。
「いや、泳ぎ過ぎだから。私は、二往復で止まったのに」
「し、仕方ないだろ」
「というか、本当に泳ぐのは早いんだ」
「足も遅くはないぞ。あと、泳ぐのは肩こりにいいんだ」
「へぇ? そうなんだ?」
「執筆する人の大半は、肩凝り腰痛持ちだからなぁ。俺も若いとはいえ、今から注意しないと」
とかなんとか言って、誤魔化してみる。
本当は、ただの煩悩退散のためである。
「確かに、座りっぱなしだし。私もさ、肩を凝るんだよねー」
「へっ? ……そりゃ、そうだな」
そんだけ立派なモノを持っているのですから。
というか、よく見たら浮いてるし。
おっぱいって浮くんですね……これは創作の世界じゃわからないことだ。
「ど、どこ見てるし」
「す、すまん」
「……別に見ても良いから」
「はい?」
「そんなことで怒らないし……野崎君なら良いし」
「えっと……どういう意味だ?」
「へ、変な意味じゃなくて……それでお礼になるならいいし」
そう言い、身をよじる。
しかし、その顔は複雑な表情を浮かべている。
……これで、はいそうですかというほど腐っちゃいないつもりだ。
「見損なうなよ」
「へっ?」
「見られるのが苦手なのに、それを無理に見ることはしない。いや、既に見てるから説得力ないかもしれないけど。少なくとも、お礼とかどうかとかは違うと思うし」
「……ふふ、変なところで律儀だね?」
「ほっとけ。そもそも、水着になってるとはいえ、じっと見たら失礼だろうが」
「ふふーん……えいっ!」
「うひゃぁ!? な、なんで腕を組む!?」
どうして、再びおっぱいを押し付けられているのですか!?
ほんとわけがわからない!
「ププ、面白い顔。野崎君は良い人だね。ただ、ちょっとずれてるかな?」
「褒めてんのか貶してるのかどっちだよ?」
「うーん……微妙? 嬉しいけど、嬉しくないみたいな?」
「なんで疑問形なんだ?」
「まあ、わかんなくて良いし。それが、君の良さでもあるから。じゃあ、次はウォータースライダーに行こ!」
よくわからないが、葉月は嬉しそうな表情を見せている。
とりあえず、それなら良いかと思い、俺は葉月に引っ張られていく。
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