第95話 遊園地その七
……その背中から目が離せない。
綺麗な肩甲骨や腰のくびれ、ゆらゆらと揺れるポニーテールに。
「ねえ? 聞いてるの?」
「はい?」
葉月がこちらを振り返り、仏頂面をしている。
いかん、全然聞いてなかった。
「聞いてないし。まずは、どこに行こうかなって」
「いや、引っ張るから決まってるもんかと」
「あれは違うし……というか、何か言うことないの?」
……そうだった! 肝心なこと言ってねえ!
はぁ、これだからダメなんだよなぁ。
「その……似合ってます」
「何が似合ってるの?」
「へっ? ……水着姿が似合ってます」
「もう一声! ほら! ラブコメイベントだと思って!」
「み、水着姿が似合ってて可愛いと思います。あと、ポニーテールも素敵です」
ァァァ! 身体がムズムズするゥゥ!!
女子に、こんな台詞言ったことないし!
「棒読みだけど……ふふ、合格にしてあげる」
「それはどうも……というか、からかってるな?」
「あっ、バレた? だって、野崎君があんまりにおどおどしてるから。そんなに、魅力的かなーって」
「魅力的で困ってるよ……他の男に見せたくないくらいだ」
「……はえっ?」
葉月から変な声が漏れたので、顔を見ると……目が点になっている。
「な、なんだよ? 言っておくが、ただのラブコメイベントだからな? こういうセリフ、言いそうだし」
「えっ? い、いや、その……わかってるし! ただ、さらっと言ったなぁって」
……そりゃ、本音だからだろうよ。
俺は見たいくせに、人に見せたくないとか……何を思ってんだか。
「そ、それより……さっきのアレはなんだったんだ? なんか、ラブコメイベントを楽しみにしといてって」
「えっと、アレは……こういうことよ!」
「……へぁ?」
「ど、どう? ……柔らかい?」
オォォォ!! 腕を組まれとるゥゥゥ!!
おっぱいの感触が、いつもよりダイレクトに伝わってくる!
「な、な……」
「は、鼻血とか出さないでよ? 漫画じゃないんだから」
「わ、わかってる」
どちらかというと、下半身の方が危ない。
俺のアレがアレでアレしそうだ……だめだ、語彙力が死んでる。
「それで、どのプールから行く? 流れるプールと、普通のプール、波が押し寄せ来るプールがあるけど。あと、ウォータースライダーあるし」
「……思い切り泳いでも良いか?」
「うん? 別に良いけど、泳ぐのは得意なの?」
「前も言ったけど、陰キャだから運動神経が悪いわけじゃないからな」
「そういえば、言ってたね。じゃあ、普通のプールからいこ」
そのまま、腕を組まれたまま、プールサイドを歩いていく。
……思いきり泳いで、この煩悩を振り払わないと。
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