第92話 遊園地その四

 その後、食事を済ませ……。


 そのまま、付近にある商店街を散策する。


「どうするの? お土産を買う?」


「いや、そろそろ始まるはず」


 ここが再び栄えたのは、あることを始めたからだ。


 お客さんを飽きさせないように、色々なイベントを仕掛けてある。


「ん? どういうこと?」


「……きた」


 すると『カンカンカン!』と鐘の音がなる。

 これが、イベントの合図だ。


「なになに!?」


「なんの音!?」


「三人共、端っこに寄ろう」


 俺達が端の方によると、向こうから人が走ってくる。

 昔ながらの風呂敷を被った人と、侍のような格好をしたが追いかけっこをしている。


「あれなに!?」


「悪い人!?」


「へぇ、そういうことね」


「違う違う、あれはイベントだよ。ほら、見てごらん」


 俺達の目の前では、寸劇が繰り広げられている。


「待て待てい!」


「御用だ御用だっ!」


「待つわけがないだろうが!」


 そして、大立ち回りを演じて……最終的に泥棒役が取り押さえられる。

 その後、三人はお辞儀をして、ささっと退散していく。


「うぉー! かっこよかった! バク転とかしてた!」


「うんっ! 映画みたいだった!」


「へぇ、結構本格的だったわね」


「俺も初めて見たけど、ちゃんとしたアクションシーンだったな」


「もう一回見たい!」


「私も!」


「じゃあ、後でまたくるか」


「「うんっ!!」」


 その後、二人は商店街の中を楽しそうに歩いている。

 ふぅ……楽しんでもらえたみたいだ。

 どうやら、時間調整をした甲斐があったな。


「……何よ、やるじゃん」


「ん? 何か言ったか?」


「う、ううん! ……二人が楽しめるように考えてくれてありがとう」


「お、おう」


 素直に礼を言われると、少し照れてしまう。

 なので俺は視線をずらして、そっぽを向く。


「……これは、私も頑張らないといけないよね」


「ん? 何か言ったか?」


「な、なんでもないし! ほら! 二人が行っちゃうよ!」


「わ、わかったから! 引っ張るなって!」


 俺は葉月に急かされ、二人の後を追うのだった。





 その後、お土産コーナーの下見を終えたら……いよいよ、プールへ向かう。


「プール! プール!」


「プール! プール!」


 二人は手を繋いではしゃいでいる。


「さて、空いてると良いが……」


「………よし、平気そう」


「ん? どうした?」


 葉月が何やら、スマホを見ている。


「ううん、何でもない。ふふ、ラブコメイベントを楽しみにしててね?」


「えっ? ……どういう意味だ?」


「良いから良いから。よし! いこー!」


 何やらテンションの高い葉月の後を追っていく。


 ……一体、どういう意味だろうか?


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