第91話 遊園地その三

 その後、結局は……十五分くらい待つことになった。


 二人が、降りるたびに乗りたいと言ったからだ。


 そして、5回乗ったところで満足したらしい。


「楽しかったぜ!」


「うんっ! 楽しかった!」


「いやいや、乗りすぎだから」


「まあ、良いだろ。というか、結構な時間になったけどどうする?」


 スマホを見ると、十一時半を過ぎていた。


「俺、お腹空いた!」


「わたしもっ!」


「うーん、少し早いけどお昼にしよっか」


「じゃあ、商店街に行くか」


「商店街?」


「まあ、行けばわかるよ」





 三人を連れて、目的地に到着すると……。


 そこには西武商店街と書かれた看板があり、その奥には左右に店が立ち並んでいる。


 まさしく、遊園地にある商店街といった感じだ。


「へぇ、そういえば話題になったことあったし。確か、レトロな商店街を再現したんだっけ?」


「ああ、それで合ってる。昭和の懐かしいオモチャとか、昔ながらの喫茶店とかがあるとか」


「あと、何かあったよね?」


「ああ、大道芸人の人がいたりするらしい」


「「見たい見たい!」」


「はいはい、まずは食べてからね」


 その後、俺が事前に調べておいた店に入る。


 ここは見た目はお洒落な喫茶店だが、子供向けの商品がたくさんあると書いてあった。


「ふーん、良いじゃん。結構、色々あるのね」


「俺、ナポリタン!」


「わたしはオムライス!」


「俺はカレーにするかな」


「私はハヤシライスかなぁ」


 それぞれ注文を済ませ、商品の到着を待つ。

 その間に子供二人は、備え付けである間違い探しやなぞなぞに夢中になっている。

 これが、子供というか……子連れに人気な理由ってわけだ。

 対面に座る二人の邪魔をしないように、俺と葉月は身を寄せて話し合う。

 ……その際に、良い香りがしたのは仕方ない。


「この後はどうするの?」


「流石に、食後にプールとか遊具は無理だろ。とりあえず、さっき言ってた大道芸人さんとか、お土産を買ったらいいんじゃないかと。もしくは、下見でも良いし」


「うん、そうしようか」


「ある程度休憩したら、多分プールに行った方が良いかもしれない。一時くらいにいくと、確か少しは空いてるはずだから」


「それも調べたんだ?」


「まあ、一応。そもそも平日だが、なるべく人がいない方が、二人も自由に遊べるし。ウォータースライダーも並ばずにいけると思う」


「ふーん……」


「うん? どうした?」


 すると、さらに身を寄せてくる。


「てっきり、私の水着姿を……なるべく他の人に見せないためかと思ったし」


「……はっ?」


 俺がギョッとして、振り向くと……頬杖をついて、ニヤニヤしている葉月がいた。


「……からかったな?」


「ふふ、きちんとラブコメイベントしないとでしょ?」


「へいへい、そうですね」


 ラブコメイベントとはわかっていても、可愛いと思ってしまうのは仕方ないよなぁ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る