第88話 ヒロイン視点
あぁ! もう! 髪型や服装が決まらない!
急遽決まったお出掛けに、私の精神はテンパっていた。
まだ、水着を着る覚悟も出来てないし……。
「まあ、今日って決めたのはこっちなんだけど……」
お母さんが急に休みが取れたとかで、今日はゆっくりして欲しかった。
だから、タイミング良いかなって思って誘っちゃった。
「多分、平気だと思うけど……」
一応、桜にも相談して選んだし……。
◇
夏休みに入ってから数日後……私は、桜とお買い物に来ていた。
今は水着の試着を繰り返している。
「うーん、赤は派手だよね?」
「そうだね、色気はあるけど。あと、お兄ちゃんが言ってたけど、男子的には見えてないくらいが良いって。あと、ギャップを感じるとエロいとか」
「見えてないくらい……ギャップ」
「結衣は見た目が派手だから、敢えて大人しめの水着にするとか? そもそも、おっぱい大きいから、それだけで悩殺だし」
「悩殺言うなし……うーん、エッチとか慣れてるとか思われるのは嫌だなぁ」
野崎君はただでさえ、私のことを男慣れしてると思ってそうだし。
まあ、それは無理もないんだけど。
「あらら、恋する乙女は複雑ですな〜」
「恋する乙女とか言うなし」
「良いじゃん、こういう話をするの楽しみだったし。結衣はモテるのに、全然興味ないし」
「そういう桜だって、彼氏作らないじゃん」
桜は細いしスタイルいいし、顔も可愛い系でモテる。
気遣いもできるし、面倒見もいいし。
「私は良いかな〜。高校生って子供に見えるし。まあ、大学生になってから考えるかな」
「桜はお兄さんが二人いるから、尚更そう思うのかもね」
「それもあるかも。そういえば今更なんだけど、プールはいつになったの?」
「うーん、まだ決まってないんだよね」
「うわっ、焦らしってやつ? 野崎って、意外とそういう人?」
「いや、そんな感じではないかなー。単純に、忙しいみたい。その、結構バイトとかしてるし。あと、お父さんが厳しい人らしいから、成績を落とすとバイトもできないとか」
確か、小説を書くためには、成績が良くないといけないとか言ってたよね?
これなら、嘘にはならない……うーん、桜に嘘をついてるみたいで嫌だけど。
でも、こればっかりは野崎君の許可がいるよね。
「ふーん、それは大変かも。じゃあ、結構稼いでるんだ?」
「うん、そうみたい。私の遊園地代も払うとか言ってたし」
「へぇ、意外とやるじゃん。でも、結衣のことだから断ったんでしょ?」
「わ、わかる?」
「そりゃー長い付き合いだし。結衣は甘えるのが下手だからなぁー。多分、あんまり拒絶とかしてると、好かれてないとか思ってちゃうかもよ?」
「拒絶はしてないと思うけど……奢るっていうのを断ってるかも」
「それはそれでどうかと思うよ? なんかよくわからないけど、男には面子ってやつがあるらしいから」
「そうらしいね。うーん、その辺りは難しいし」
「私とかも、頼ってくれて良いんだよ? せっかく、親友に好きな人が出来たんだから」
「桜……ありがとう」
「まあ、気が向いたら言ってねー。ほら、水着を選ばないと」
「うん、そうだね」
◇
その後、二人であーだこーだ言いながら、水着を選んだっけ。
野崎君、喜んでくれるかな?
「姉ちゃん! 早く早く!」
「時間になっちゃうよー!」
「わ、わかってるし! もう少し待って!」
時間を確認すると、いつのまにか待ち合わせ時刻が近づいていた。
「やばっ! えっと、髪はプールに行くし、遊具に乗るから縛った方がいいよね?」
あと、桜が清楚系が良いって言ってたから、ワンピースにして……。
「……これ、似合ってるの? なんか、気合い入りすぎ?」
「早く早くー!」
「お姉ちゃん!」
「あぁ! もう! よし——いくわよ!」
もう時間がないので、覚悟を決めて家を出る。
……似合ってるって言ってくれるかな?
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