第87話 待ち合わせ
次の日の朝、俺は朝から準備をする。
というより、急遽決定したので、色々と失念していた。
「姉貴! 髪型はどうしたら良い!?」
「何を言ってるのよ? あんた、プール行くのに髪型を気にしてどうするの?」
「……それもそうだな。どうせ、濡れるもんな」
「というか、何を今更テンパってるのよ? 行くことはわかってたでしょ?」
「い、いや、それはそうなんだが……いざとなったら、めちゃくちゃ緊張してきた」
当たり前だけど、女の子と遊園地やプールなんか行ったことないぞ?
「はぁ……情けない」
「というか、何すれば良いんだ?」
「泳いだり、遊具に乗ったりするわね。というか、それ以外にないでしょ」
「そ、そっか」
い、いかん、予想以上にテンパってる。
姉貴の言う通り、ほんと情けない。
「良いから、早く着替えなさい。言っておくけど、カッコつけた格好をしなくて良いからね? 遊園地に行くのに邪魔だし、印象悪いから」
「……乗り物に乗るからか。ありがと、姉貴」
「まったく、世話がやける弟ね」
となると、大した準備はいらないな。
その後、軽くシャワーを浴びて髪を乾かしたら、動きやすい格好に着替える。
すると、葉月からラインがくる……そろそろ駅に向かうと。
流石の俺もわかる、女の子を待たせるわけにはいかないってことくらいは。
「姉貴! 行ってくる!」
「はいはい、いってらっしゃい」
リュックを持って、俺は家を飛び出すのだった。
夏の日差しの強い中、走り続け……なんとか、葉月達がくる前に駅に到着する。
「はぁ、はぁ、シャワーを浴びた意味なかったな。というか、プール行くから必要なかったのか?」
ほんと、慣れてないからわからん。
遊園地やプールなんか、中学生以来だし。
すると、視界の隅に……葉月が目に入る。
……その姿に、俺の思考が停止する。
「あっ、野崎君! 待ったかな?」
「にいちゃん、こんにちは!」
「お兄さん、こんにちは!」
「……」
「あ、あれ? どしたの?」
「あれー? 返事がないよー?」
「にいちゃん! 固まってるぜ! きっと姉ちゃんが変な格好してるからだし!」
「はぁ!? そ、そうなの!?」
……可愛い。
いや、てっきりズボンとかTシャツ系でくると思ってた。
普段の格好はそうだし、今回は遊園地だし。
しかし、葉月の格好は……青のワンピースだった。
しかも、髪はサイドテールにまとめられている。
その清楚らしい姿に、ギャップを感じてしまう。
「ちょっと!? 聞いてるの!?」
「へっ? す、すまん、聞いてなかった」
「もう、汗もびっしょりじゃん。ほら、拭いてあげる」
「い、いいって!」
「ダメだし。ほら、やってあげるからじっとしてて」
そう言い、俺の顔をハンカチで拭く。
当然ながら顔や体が近くなるわけで……いかん、緊張してきた。
まだ、水着にもなっていないというのに。
果たして、俺の精神は保つのだろうか?
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