第86話 夏休みの予定
その後、食べ終わったので……。
「ご馳走様でした。めちゃくちゃ美味かったです」
「お粗末様でした。良かった、美味しかったみたいで」
「それで、今日はどうするんだ?」
「ん~、お祖母ちゃんがいるから少しだけ時間はあるんだよね。というか、詳しく聞かせなさいよ。夏コミってやつに佐々木君が来るんだって?」
「ああ、そうなんだよ。なんか、お金が必要らしくて。詳しい話は、プライベートだからあれだけど」
「ふーん、そうなんだ。まあ、詳しい話は言わなくていいし。それよりも、小説のことを話したの?」
「まあ、佐々木君なら良いかと思って」
「ふーん、随分と仲がいいんだ?」
「どうだろ? ただ、付き合いやすいかな。別によく遊ぶってわけでも、頻繁に連絡を取るわけでもないし」
「……まあ、男子だしいっか」
「何がだ?」
「ほ、ほら! 女子じゃないと、ラブコメイベントができないじゃん!」
「ああ、そういう意味か。別に、他の女子に話したとしても、俺が頼むのは葉月だろうけど」
「……へっ?」
「うん? 何か、変なこと言ったか?」
というか、葉月以外に話せる女子なんかいないし。
こちとら、プリントの受け渡し以外で、話したことなんかないし……悲しみ。
「い、いや、別に……ふーん、そっかそっか」
「それより、下読みはどうだ?」
「あ、あれね。うーん、難しい文章だなって。いや、私が読み慣れてないだけだと思うんだけど。そういう感想でも良いの?」
「多分、それでも大丈夫だ。アキラさんは文芸寄りの作家さんだから、きっとそういう意見が欲しいだろうし。俺の書くやつとは、何もかもが違っただろ?」
「うん、全く違ったし。こう、文章が固いって言えば良いのかな? あと、全体的に描写が多いっていうか」
「まあ、ライトノベルの言語はその名の通り『誰でも軽く読めるもの』だからな。一般文芸を書くアキラさんの作品が固く見えるのは仕方ないよなぁ。割と、難しい言葉とか多いし」
ライトノベルって言われるものは、人によっては馬鹿にする人も多い。
しかし、好きな人はいっぱいいる。
それに、本に読み慣れない人にとっては読みやすいのは事実だ。
どっちが良いとかではなく、共存していけたら良いとアキラさんは言っていた。
特に、今は本が売れない時代だし。
お互いに刺激しあっていけたらいいと。
「へぇ〜! そういう意味なんだっ! でもでも、確かにライトノベル?ってやつのが読みやすかったし。でも、そういう批判?みたいなことを言っても良いの?」
「いや、むしろ言った方が良い。人によるけど、アキラさんはそれを求めているだろうし。今は一般文芸だけど、そのうちライト文芸を書きたいって話だし」
「えっと、ライト文芸って何?」
「まあ、簡単に言えばライトノベルと一般文芸の中間みたいな作品のことだ。ライト層にも読み易くした一般文芸って感じだ」
「ふーん、色々あるんだ。あっ、だから私の意見が欲しいってこと?」
「そういうことだ。本当になんでも良いと思う。アキラさんは言って欲しい人だし。ちなみに俺は豆腐メンタルなんで、あんまり言われるとへこむ」
「ふふっ、かっこ悪いし」
「うるさい、繊細と言ってくれ」
「まあ、そういうことにしといてあげる。あと、プールとかいつ行くの? 花火は毎年決まってるから、日にちがわかるけど」
「それなんだが、プールと遊園地が一緒のところに行くか? なるべく、近場がいいだろうし」
「となると、あそこしかないわね。西武○園地ね?」
「ああ、そうなるな。我が地元の古参遊園地だ。でも、リニューアルもしたし、評判はいいぞ」
「確かに、リニューアルしてから行ってないかも。うん、拓也や恵梨香も喜ぶと思う」
「んじゃ、決まりだな。俺は今日である程度書き溜めができるから、明日以降なら大丈夫だ」
「うーん……じゃあ、急だけど明日でも良い? お母さんが休みだし、一人になりたいと思うから」
「わかった。それじゃあ、時間を決めて……」
その後、軽く打ち合わせをして、葉月が家に帰る。
好きな女の子と、遊園地にプールか……まさか、俺の高校生活にそんな出来事があるとは。
半年前の自分に言っても、信じないだろうなぁ。
そんなことを思いつつ、再び執筆に専念するのだった。
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